国内2000万人以上がドライアイ罹患、今後も増加予想
順天堂大学は8月23日、ドライアイ疾患特異的質問紙票について、スマホアプリ「ドライアイリズム」と紙媒体によって収集された結果を検討し、両者は同等であることがわかったと発表した。この研究は、同大医学部眼科学講座の梛野健研究員、猪俣武範准教授らと、InnoJin株式会社(順天堂大学発ベンチャー)の共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」に掲載されている。
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ドライアイは国内で2000万人以上が罹患する最も多い眼疾患の一つであり、超高齢社会、デジタル社会の進展により今後も増加すると予想されている。また、ドライアイによる眼の乾燥感や不快感といった症状は、人生長期にわたり視覚の質や集中力、労働生産性を低下させ、多大な経済的損失を引き起こすことが問題となっている。ドライアイの症状は乾燥感のみならず、まぶしさや眼精疲労、視機能低下など多岐にわたるため、自覚症状を有していてもドライアイと診断されず、適切な治療を受けられずにいるドライアイ未診断者が多数存在することがわかっている。また、ドライアイと診断されたとしても、仕事や学業、日常生活動作の低下や新型コロナウイルス感染症の蔓延のために通院の継続が困難という社会的問題がある。一方、ドライアイは重症化すると角膜障害や視力低下などを引き起こす可能性があるため、早期診断・早期治療が求められている。
オンライン診療で使用可能な電子媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票の開発へ
現在、日本におけるドライアイの診断や治療においては、紙のドライアイ疾患特異的質問紙票を用いた自覚症状による評価が行われている。近年は遠隔診療やオンライン診療の普及が進んでおり、仕事や学業による受診や通院が困難という課題の解決が期待されているが、従来の紙の質問紙票による問診は遠隔診療やオンライン診療には適しておらず、電子化されたドライアイ疾患特異的質問紙票が必要とされている。しかし、電子化されたドライアイ疾患特異的質問紙票の従来の紙の質問紙との同等性はこれまで不明だった。そのため、遠隔診療・オンライン診療において使用可能な電子媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票を開発するためには、従来の紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票との同等性を証明する必要があった。
患者33人を対象に検討し、紙媒体J-OSDIと電子媒体J-OSDIは同等と判定
研究グループは今回、開発したドライアイ研究用スマホアプリ「ドライアイリズム」を用いて、スマホアプリに搭載した電子媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票(日本語版OSDI、以下J-OSDI)、と紙媒体のJ-OSDIによって収集されたドライアイ自覚症状に関する症状スコアであるJ-OSDI合計スコアの同等性を検証した。
研究期間中(2022年4月~6月)に同大医学部附属順天堂医院の眼科外来を受診し、研究参加に同意が得られた20歳以上の患者33人を対象としたランダム化クロスオーバー試験を実施した。研究参加者を「紙媒体J-OSDI→電子媒体J-OSDI」の順に検査を行うグループと、「電子媒体J-OSDI→紙媒体J-OSDI」の順に検査を行うグループにランダムに分類し、紙媒体J-OSDIおよび電子媒体J-OSDIによって得られたJ-OSDI合計スコアを比較した。
研究参加者33人から得られたデータを解析したところ、紙媒体J-OSDIおよび電子媒体J-OSDIによって得られたJ-OSDI合計スコアの平均値の差は1.8点 (95%信頼区間:-1.4–5.0) であり、J-OSDIの同等性の許容範囲内であったことから、紙媒体J-OSDIと電子媒体J-OSDIは同等と判定された。
未受診患者へのスマホアプリを用いた治療介入も実現できる可能性
スマホアプリに搭載した電子媒体J-OSDIの紙媒体J-OSDIに対する同等性の証明に成功したことにより、従来の紙媒体のドライアイ疾患特異的質問紙票による問診をスマホアプリによって代替できる可能性がある。「スマホアプリによるドライアイ自覚症状の評価が可能になれば、遠隔診療・オンライン診療におけるドライアイ自覚症状の適切な評価や、これまで受診できていなかった未受診患者へのスマホアプリを用いた治療介入により、ドライアイ患者の早期診断、早期治療を実現できる」と、研究グループは述べている。
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