PHBが肥満を抑制する可能性を肥満マウスで検証
東京工科大学は8月21日、バクテリア由来でケトン体のポリエステル化合物であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)が、肥満との関連が指摘されているアッカーマンシア・ムシニフィラ属の腸内細菌を増加させることをマウス実験で見出したと発表した。この研究は、同大応用生物学部の佐藤拓己教授、麻布大学獣医学部の永根大幹講師、同山下匡教授、アニコム先進医療研究所株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「FASEB Journal」オンライン版に掲載されている。
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佐藤教授はこれまで、ケトン体がアンチエイジング分子であることに注目し、大腸内でケトン体を放出する分子のケトン供与体について研究開発を行ってきた。その中で、PHBは酪酸菌を活性化し、酪酸濃度を高めて腸内の炎症を抑制することを動物実験で検証した。また、PHBはケトン体を徐々に放出するため、ケトン体を持続的に増加させることが可能だという。一方、ケトン体は細胞膜上の特異的なタンパク質と結合して血中の中性脂肪などを低下させることも報告されている。
そこで研究グループは、これらを踏まえPHBが肥満を抑制する可能性について、肥満のマウスモデルによる検証を行った。
PHB2摂取の肥満マウス腸内で肥満者に少ないアッカーマンシア属増加、中性脂肪減少
PHB2混餌を供与した肥満マウスにおいて、腸内細菌の菌叢解析をしたところ、酪酸菌の一種でヒトの健康長寿との関連が議論されることが多いロゼブリア属とともに、アッカーマンシア属が有意に増加していることが判明した。
アッカーマンシア属は粘膜層に定着する腸内細菌で、酪酸菌や乳酸菌とともに善玉菌のひとつとされている。肥満ではないに多く、肥満の人に少ないことから「痩せ菌」の実体である可能性も指摘されている。このため、アッカーマンシア属は次世代プロバイオティクスの有望な候補の一つとされている。
一方、PHBは肥満マウスの血糖値は抑制しなかったが、中性脂肪を有意に減少させることも明らかになった。コントロールマウスでは、PHBは血糖値も中性脂肪も減少させなかったという。
アッカーマンシア属のプロバイオティクス利用による肥満抑制効果に期待
アッカーマンシア属の腸内細菌は、健康な腸内では数%の菌数を占めるのに対し、肥満者ではほとんどが消失することがわかっており、アッカーマンシア属をプロバイオティクスとして利用することで、肥満抑制効果が期待される。
「これまでアッカーマンシア属を増やす天然分子はあまり知られていなかったが、今回の報告からPHBがアッカーマンシア属を大腸内で増殖させるプレバイオティクスとして期待されるとともに、今後の研究が待たれる」と、研究グループは述べている。
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