米FDAが産後うつ病の経口治療薬Zurzuvaeを承認
米食品医薬品局(FDA)は8月4日、産後うつ病(PPD)に対する初めての経口治療薬としてZurzuvae(一般名zuranolone)を承認した。Zurzuvaeの1日当たりの推奨用量は50mgで、毎夕14日間、脂肪の多い食事とともに摂取する。産後うつに対する治療薬としては、2019年にZulresso(一般名ブレキサノロン)がFDAにより承認されている。この承認は画期的ではあったが、Zulressoは、医療機関で医療従事者による点滴投与が必要な上に、点滴には60時間もの時間を要する。
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PPDは他のタイプのうつと同様、悲しみ、かつて楽しんでいた物事への関心の喪失や楽しみの減少などを特徴とする。また、認知機能の障害、悲嘆や無力感、活力の喪失、自殺念慮を伴うこともある。米国では、8人に1人の女性が出産の直前、あるいは出産後に抑うつ症状を発症している。
ZulressoとZurzuvaeは両方とも、プロゲステロンの副産物である神経ステロイドのアロプレグナノロンを有効成分とする薬剤である。アロプレグナノロンの濃度は、妊娠中に劇的に上昇し、出産後に急降下することがあり、産後抑うつ症状の一因となる可能性が指摘されている。
Zurzuvaeの有効性は、PPD患者を対象にした2件の多施設共同ランダム化比較試験において確認された。対象者は、1件目の研究では、Zurzuvae 50mgを毎夕14日間摂取する群とプラセボを摂取する群に、2件目の研究では、毎日1回、zuranolone 30mg(Zurzuvae 40mgに相当)、またはプラセボを14日間摂取する群にランダムに割り付けられた。その結果、いずれの研究でも、介入群では15日目にハミルトンうつ病評価尺度17項目で評価した抑うつ症状が、プラセボ群よりも有意に改善したことが示された。この治療効果は、介入終了から42日目でも維持されていた。
安全性に関しては、Zurzuvaeの服用で最も頻繁に生じた副作用は、眠気、めまい、下痢、倦怠感、鼻咽頭炎、尿路感染症などであった。また、Zurzuvaeの服用は、自殺念慮や自殺行動を引き起こす可能性があるほか、胎児に害を及ぼす可能性もある。さらにFDAは添付文書の枠組み警告において、Zurzuvaeの服用が運転などのリスクを伴う活動を行う能力に影響を与える可能性があるとし、服用後12時間は運転や重機の操作をしないように注意を促している。
2件の論文の筆頭著者である、米ザッカー・ヒルサイド病院のKristina M. Deligiannidis氏は、「zuranoloneが迅速に抗うつ効果を発揮する機序は、現状では正確には分かっていない。しかし、zuranoloneのような神経ステロイドは、ストレスを迅速に軽減し、健全な脳内ネットワークのつながりを回復させることで、脳の健康をサポートする働きをすることが研究で示唆されている」と説明する。同氏はさらに、Zulresso投与で報告されている意識消失がZurzuvaeでは報告されていないことを指摘し、Zurzuvaeの方が安全性の高い可能性があるとの見方を示している。
なお、Zurzuvaeの承認は、Sage Therapeutics社に対して付与された。
▼外部リンク
・FDA Approves First Oral Treatment for Postpartum Depression
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