何百万もの喫煙者が未診断の肺疾患に罹患か
米国では何百万人もの喫煙者が、厳密には慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断に合致しないが潜在的に深刻な肺疾患に苦しんでいることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)呼吸器内科部長のPrescott Woodruff氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月1日掲載された。研究グループは、「このような人が明確な診断を受けることで得られるメリットは大きいだろう。この知見は、喫煙歴のある人に対するケアが十分でないことを明示するものだ」と述べている。
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COPDは多くの場合、長期にわたる喫煙と関連し、米国では主要な死因の第6位を占めている。米疾病対策センター(CDC)の推計では、2020年の米国でのCOPDの患者数は1250万人である。しかし、過去の調査では、1800万人以上が肺機能低下の兆候を呈していることが報告されている。これは、明確な診断がつかないまま、さらに数百万人が呼吸器系の問題を抱えている可能性のあることを示唆している。
COPDはスパイロメトリーと呼ばれる呼吸機能検査で評価される。スパイロメトリーでは、息を最大まで吸い込んだ状態から一気に吐き出す際の最初の1秒間の呼出量〔1秒量(FEV1)〕と最大まで吸い込んだ息を一気に全て吐き出した際の呼出量〔努力肺活量(FVC)〕を調べ、FEV1をFVCで割った値〔1秒率(FEV1/FVC%)〕が70%未満の場合にCOPDと診断される。
Woodruff氏らは、過去の研究(SPIROMICS I)で、20パックイヤー超(1日1箱のタバコを20年以上喫煙)の喫煙歴を有する40〜80歳の現/元喫煙者と、喫煙歴や気流閉塞のない人(対照群)に生じる呼吸器症状を3年間追跡した。その結果、現/元喫煙者の50%で、息切れや運動能力の低下などの呼吸器症状が認められたが、スパイロメトリーでは異常が検出されなかった。Woodruff氏らは、このようにタバコへの曝露があるがスパイロメトリーで異常が検出されない状態を、tobacco exposure and preserved spirometry(TEPS)と呼んでいる。
今回の研究(SPIROMICS Ⅱ)では、SPIROMICS Iの対象者の一部(1,397人)をさらに3年以上(2021年まで)追跡して症状の経過を追い、時間の経過とともにTEPSがCOPDに移行する可能性などについて検討した。SPIROMICS Iの対象者は、スパイロメトリー、6分間歩行試験、呼吸器症状の評価、胸部CTスキャンを3〜4年間、毎年受けていた。SPIROMICS Ⅱの対象者は、SPIROMICS Iでの試験開始時の検査から5〜10年後に再検査を受けた。呼吸器症状は、COPDアセスメントテスト(0~40点、高スコアほど重症)で評価した。対象者のうちの226人(平均年齢60.1歳、女性59%)は症候性のTEPS、269人(平均年齢63.1歳、女性50%)は無症候性のTEPSを持っていた。追跡期間中央値は5.76年に及んだ。
その結果、症候性TEPS群と無症候性TEPS群のFEV1の減少量はそれぞれ−31.3mLと−38.8mL(群間差−7.5mL/年、95%信頼区間−16.6~1.6mL/年)、COPDの累積発症率はそれぞれ31.6%と33.0%(ハザード比1.05、95%信頼区間0.76〜1.46)と、両群間で類似していた。しかし、症候性TEPS群の方が、呼吸器系の状態の悪化する率が高く(0.23件/人年対0.08件/人年、率比2.38、95%信頼区間1.71~3.31、P<0.001)、活動を制限するような息切れが認められた。
Woodruff氏は、「われわれが最初にTEPSについて報告したのは2016年だった。今回のさらなる追跡調査から、TEPSはどうやら初期段階のCOPDとは異なる可能性が示唆された。TEPSは時間が経過してもTEPSのままであるようだ」と述べる。
Woodruff氏によると、現状では、TEPSに対する治療法はないという。同氏は、「喫煙をやめることで多くの人で症状が改善するが、全員ではない」と説明する。同氏らは、TEPS患者に対して、COPDの治療で用いられる気管支拡張剤での治療を試みたことがあると話す。この治療により、肺機能は改善したものの症状がなくなることはなかったという。同氏は、「TEPSの原因は粘液の異常分泌かもしれず、粘液をコントロールする治療法が最も効果的かもしれない。われわれは、TEPSは慢性気管支炎の一種と考えている」と話している。
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・Longitudinal Follow-Up of Participants With Tobacco Exposure and Preserved Spirometry
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