医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > あらゆる核酸医薬へ簡便に光架橋性付与、新たな技術を開発-長崎大ほか

あらゆる核酸医薬へ簡便に光架橋性付与、新たな技術を開発-長崎大ほか

読了時間:約 1分51秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年08月17日 AM11:01

二重鎖DNAに対して強固に結合する人工核酸の開発が求められる

長崎大学は8月10日、あらゆる核酸医薬に対し「光反応性」の付与を実現する新たな技術を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)の山吉麻子教授、三瓶悠助教、中尾樹希大学院生ら、東北大学の和田健彦教授、大阪大学の堂野主税准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「ChemBioChem」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

核酸医薬は、従来の医薬品では標的にできなかった遺伝子そのものを標的に出来るという点で、新たな創薬モダリティとして注目を集めている。これまでは、mRNAを標的とした核酸医薬品が上市されてきたが、近年、遺伝子の本体であるDNAを直接標的とした核酸医薬が注目を集めている。DNAは二重らせん構造を形成しているため、これに対し三重鎖形成して結合する核酸医薬が必要になる。特に、二重鎖DNAに対して強固に結合する人工核酸の開発が求められており、さまざまな人工核酸が開発されてきた。

皮膚病の光線治療に用いられる「Psoralen」に着目

研究グループはこれまでに、光照射によって標的遺伝子と架橋する光架橋性核酸医薬を開発してきた。光架橋性分子として、皮膚病の光線治療などに用いられている天然化合物「Psoralen(ソラレン)」に着目。これを導入した人工核酸を開発し、核酸医薬としての有効性を検証してきた。光架橋性核酸医薬は標的遺伝子と共有結合を介して結合するため、不可逆的で強固な結合形態を実現する。一方で光架橋性核酸医薬の合成には、特殊な試薬や手法(固相ホスホロアミダイト法)が必要であり、DNA自動合成機を所有していない一般の実験室で合成することは極めて困難だ。

アミノ基を有する分子と混ぜるだけ、原理的にどの分子にもPsoralen導入可能

今回、研究グループは、さまざまな核酸医薬に簡便に光架橋性を付与することが可能な「新たな光架橋性試薬(Psoralen-NHS)」を開発した。Psoralen-NHSは、アミノ基を有する分子と混ぜるだけで、原理的にどの分子にもPsoralenを導入することが可能だという。

二重鎖DNAへの架橋効率が大きく向上

また、既存の光機能性化合物を用いて合成した人工核酸と比較し、開発した光架橋性化合物を用いて合成した人工核酸は、二重鎖DNAに対する架橋効率が大きく向上することを見出した。

ゲノム編集技術などへの展開に期待

今回の研究成果は、光を用いた次世代型の核酸医薬として、また、ゲノムDNAの情報を書き換えるゲノム編集技術への展開が期待される。光を外部刺激として用いるため、遺伝子発現の時空間的な制御も可能となるため、新たな遺伝子解析ツールとしての活用も期待される。さらに、本研究成果によって、核酸医薬だけでなく、アミノ基を有するさまざまな分子に光架橋性を付与することも実現できる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大