先行研究で、UBL3タンパク質が細胞間情報伝達に関わることを発見
浜松医科大学は8月9日、UBL3タンパク質とパーキンソン病の病態進行に関与することが知られているα-シヌクレインとが結合することを発見し、その結合が抗がん剤オシメルチニブによって抑制されることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部細胞分子解剖学講座の瀬藤光利教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「biomedicines」にオンライン掲載されている。
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細胞よりも小さな膜小胞(エクソソームなど)によって、細胞間情報伝達が行われている。この細胞間情報伝達が、がんや神経変性などの病態が伝播していく機構に関わっていると考えられている。研究グループは、2018年にUBL3タンパク質が細胞間情報伝達に関わることを発見した。このUBL3を制御することで病態の伝播を抑制できると考え、UBL3と結合する疾患関連タンパク質を継続して調査してきた。
UBL3とα-シヌクレインの結合を確認、その迅速評価測定系も構築
今回の研究では、UBL3が発現しないよう遺伝子改変させたマウスの脳組織で、パーキンソン病の病態進行に関連するα-シヌクレインのリン酸化状態が特定の脳領域(黒質)で上昇していることを発見した。UBL3とα-シヌクレインが結合すると考え、その結合を生化学的に検証し、確かめた。
次に、タンパク質同士が結合すると発光する技術を用いて、UBL3とα-シヌクレインが結合することを迅速に評価できる測定系を構築した。
オシメルチニブ、UBL3とα-シヌクレインの結合を半分程度にまで抑制
この測定系を用いて、32種の承認薬剤を使ってUBL3とα-シヌクレインの結合の変化を検証。その結果、リン酸化酵素阻害剤のオシメルチニブが半分程度にまで結合を抑制することを明らかにした。
パーキンソン病、新しいタイプの治療薬開発に期待
運動機能障害などの症状が進行していくパーキンソン病では、神経細胞が変性死する病態の神経組織内伝播を抑制することは、重要な治療戦略の1つと考えられている。今回の研究成果は、神経変性などの病態が伝播する際に関与するとされる細胞間情報伝達を標的とした、新しいタイプの治療薬開発に貢献できることが期待される。また、既存薬や開発中もしくは開発中止となった医薬品・化合物を、当初想定していた疾患とは異なる疾患の治療薬として転用する「ドラッグリポジショニング」の観点から開発してくことも期待される、と研究グループは述べている。
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