FD患者を容易かつ客観的に判断する方法確立を目指す
川崎医科大学は8月14日、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)患者が食事画像を見た際に脳活動が亢進することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大健康管理学教室の勝又諒講師、鎌田智有教授、川崎医療福祉大学リハビリテーション学部の視能療法学科の細川貴之准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Gastroenterology」オンライン版に掲載されている。
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FDや過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の症状を抱えている人は全人口の約10%とされ、不登校・休職など日常生活に支障を来すケースも多い。また、通常の医療現場で行われる血液検査や内視鏡検査、CT検査などでは異常が見つからず、病気であることが客観的に示されないために、周囲の人に苦しみが理解されにくいといった問題がある。精神的ストレスや脂肪分の多い食事が原因とされるものの、病気のメカニズムの解明は進んでおらず、病気の客観的診断法は確立されていない。
MRI検査により、FD・IBS患者の脳血流が健常者と異なることは過去の研究で確認されている。しかし、症状のある全患者に対し、測定に手間と時間がかかるMRI検査を実施することは困難である。そのため、世界中で患者と医療関係者の負担を減らすことを目的とし、容易かつ客観的にFD・IBS患者を判断する方法が研究されている。
FD・IBS患者と健常者に、脂肪分で分類の食事画像を見せ脳血流測定
今回の研究では、FD・IBS患者と健常者に、脂肪分の多い(こってりした)食事と脂肪分の少ない(あっさりした)食事、その中間の食事の画像を計40枚、7秒ずつ見てもらい、脳の血流を測定。食事に対する好き嫌いを0~100点で回答してもらった。脳血流測定は、MRIと違い測定場所を選ばず、容易に脳活動が測定でき、導入コストもMRIに比べて格段に安い(100分の1以下)機能的近赤外分光法(fNIRS)を使用した。
FD患者は脂肪分の多い食事を好まない
研究の結果、FD患者は健常者やIBS患者と比較して脂肪分の多い食事を好まないことが示された。FD患者では脂肪分の多い食事を食べるとすぐに症状が誘発されることから、脂肪の多い食事に対する苦手意識が生じていると考えられる。
FDでは左背側前頭前野で血流量増、特定の食事後の腹痛経験によるストレスか
また、FD患者は食事画像を見た時の脳活動が健常者と比較して、明らかに亢進していた。特に、左背側前頭前野で血流量が増加。特定の食事後に腹痛を何度も経験したことで、どの食事画像を見てもストレスを感じるようになったことが推定される。
臨床現場でFD患者を見分ける新たな診断法開発に期待
FD患者の脳には負担がかかっていることが広く認知されることで、これまで病気の客観的な指標がなく、その苦しみが周りの人に理解されにくかったFD患者が生きやすい環境づくりに役立つ、と研究グループは述べている。また、食事画像を見て脳の血流を測る客観的かつ簡便な今回の方法は、臨床現場でFD患者を見分ける新たな診断法の開発につながることが期待される。
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