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心不全発症と腎機能マーカーの恒常的高値に「関連あり」、長期研究で-阪大ほか

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2023年08月15日 AM09:09

腎機能悪化と新規心不全発症の関連、先行研究で結果が相違

大阪大学は8月1日、ヨーロッパ人約7,000人の11年間におよぶ腎機能マーカーの推移と心不全入院に関するデータを分析・評価し、全ての腎機能マーカーにおいて恒常的にそれらの値が高い場合、心不全発症リスクとの関連が見られることがわかったと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の坂庭嶺人特任助教(公衆衛生学)、オランダ・グローニンゲン大学循環器教室および同大メディカルセンターらの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Heart Failure」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心不全は世界的に増加の一途を辿る病気で、現在日本国内では約120万人、世界では約3000万人が発症し、著しく健康寿命を縮めるため、予防の重要性が近年ますます叫ばれている。腎機能と心臓の密接な関連(Cardio-Renal Association)は広く提唱されてきたが、腎機能の悪化と新規の心不全発症に関しては、先行研究で「関連なし」とする結果と「関連あり」する結果どちらも散見されていた。このことから、「心不全になるから腎機能が悪くなるのか?」、その反対に、「腎機能が悪くなるから心不全になるのか?」について確かなことはわかっておらず、今までにも国際的なガイドラインでいくつもの論議が重ねられていた。

また、正確な腎機能マーカーの評価は意外と難しく、例えば、短い間隔での同じ測定方法を用いた評価でも、尿中アルブミンなどのデータは天候・時間などによっても大きく値が変動するため、実臨床レベルでの正確な利用は手間やコストパフォーマンスの観点から困難とされてきた。

心不全既往なし欧州7,000人の腎機能マーカーを経年評価

研究グループは今回、「PREVEND (Prevention of Renal and Vascular End-Stage Disease)Study」において、過去に心不全発症のない欧州人約7,000人の11年間のコホート研究を実施した。腎機能マーカー(尿中アルブミン・血清クレアチニン)の変動と新規心不全発症との関連を調査し、最新の分析技術を応用・評価した。

腎機能マーカー、短期間では変動大だが経年的にはほぼ一定

その結果、統計学的に腎機能マーカーの変動パターンは数種類のサブタイプに分類できることが明らかになった。短い間隔での腎機能マーカーは大きく変動するとされてきたが、11年間の経年的な変化においてはどちらの腎機能マーカーでもほぼ全てのパターンで一定に推移していることがわかった。

腎機能マーカーの継続的な改善により、心不全発症リスクは半減と推定

新規の心不全発症との関連については、同じデータを用いて単年評価の腎機能と心不全発症を評価した先行研究では「関連なし」とされていたが、今回の研究では高く維持されている腎機能マーカーほど心不全発症リスクが高く、非常にクリアな関連が認められた。また、サンプルサイズの問題により統計的な有意差は認められなかったものの、すでに微量アルブミン尿などの腎臓がある程度低下している人でも、腎機能マーカーの継続的な改善により、心不全発症リスクを約半減させることが示唆された(尿中アルブミン:Class5 vs Class 6)。

腎機能マーカーを利用した将来の心不全予測への応用に期待

心不全の予防は世界的な課題であり、今回の研究はその対策の有益な科学的エビデンスとなる。特に、短い間隔での評価では変動が大きいとされていた腎機能マーカーは、長期的にはほぼ一定の推移を示しており、それらと心不全発症の密接な関係性を示したこの研究は、腎機能マーカーを利用した将来の心不全予測に対する懸念・疑問を解消する結果となった。「日本国内においても特定健診や社内の健康診断など、経年的な健康情報のサンプリングは実施されているものの、有益な活用例はまだ少なく、これらを利用することにより、より正確に病気を予測できる可能性が示唆される」と、研究グループは述べている。

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