NMOSD治療は再発予防が重要
アレクシオンファーマ合同会社は、ユルトミリス(一般名:ラブリズマブ[遺伝子組換え])が2023年5月25日付で、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の再発予防に対する適応追加の承認を取得したことを受け、7月18日にメディアセミナーを開催した。
セミナーには磯部紀子教授(九州大学大学院医学研究院神経内科学教室)と中島一郎教授(東北医科薬科大学医学部脳神経内科学)およびアレクシオンファーマの星野洋氏(メディカルアフェアーズ本部長)が登壇。それぞれNMOSD の疾患概要、ユルトミリスの臨床的意義、アレクシオンファーマのNMOSD 治療向上へのコミットメントについて解説した。
NMOSDは日本の成人患者数が約4,000人と推定される希少疾患である1)。自己免疫性の疾患で、視力の低下、視野の狭まりなどの視覚障害、四肢のしびれや麻痺といった日常生活への影響を呈するほか、嘔吐や便秘、過眠など、胃腸の不調や、日常生活における疲労の影響とも誤解されやすい症状がみられる2)。
またNMOSDはほぼすべての患者に予測不可能な再発が認められる3、4)。神経症状の新規出現や既存の神経症状の悪化が再発の特徴であり、再発を繰り返しながら障害が進む。磯部教授は「再発するたびに患者のQOLが低下していくため、NMOSD治療ではいかに再発を避けるかが重要」と強調した。
ユルトミリスの適応症追加によってNMOSDの治療選択肢が拡大
NMOSD患者の約4分の3が、アクアポリン4というタンパク質に結合する抗アクアポリン4抗体という自己抗体を保持しており、この結合により、免疫系の一部であり感染に対する生体防御に不可欠な補体系が不適切に活性化されて、視神経、脊髄、脳の細胞が破壊されることがある。
ユルトミリスは、この補体経路の終末部分に存在するC5タンパクを阻害することで効果を発揮する世界初、唯一の長時間作用型C5補体阻害剤であり、国際共同第三相試験(CHAMPION-NMOSD 試験)の結果からNMOSD再発リスクを低下することが示された。
臨床試験について解説した中島教授は、ユルトミリスの投与群は「90週間(中央値)の観察期間のうち再発した患者が0人だった」と効果を評し、「ステロイドなしでも再発を起こさない治療ができる」と治療選択肢の拡大に期待を寄せた。一方で、補体阻害薬を使用する際には「髄膜炎菌感染症に注意し、もし患者が感染症を起こしたときはすぐに対応することが求められる」と指摘した。
ユルトミリスは、成人の患者において初回の開始用量を経た後に、その2週間後から以降8週間ごとに点滴静注される。
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・アレクシオンファーマ プレスリリース