発症早期に重症度層別化が望まれるが、実臨床で利用しやすい予後予測スコアはなかった
新潟大学は8月8日、Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症に対する新たな予後予測スコア(CRISTEN)を開発し、国際検証により血液検査が必要な既存のスコアと同等の精度が確認されたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の濱菜摘講師、阿部理一郎教授、環境予防医学分野の中村和利教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に掲載されている。
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重症薬疹であるStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)(以下、SJS/TEN)は、いまだ致死率が高い予後不良の医原性疾患。予後改善のためには、発症早期に重症度による層別化を行い、治療方針を早期に決定することが望まれる。しかし、これまで実臨床で利用しやすい予後予測スコアはなかった。そこで今回研究グループは、厚労科研研究班による第2回SJS/TEN全国調査で得られたデータを基に、初診時の臨床所見と既往歴により、簡便に死亡率が推定できる新しい重症度・予後予測スコア(CRISTEN)を作成した。
発症時に既往歴・皮膚所見のみで予後予測、血液検査が必要な既存のスコアと同等の精度
CRISTENは、国内11施設および海外の研究機関8施設との共同研究により開発された。SJS/TEN症例の死亡リスク因子のうち寄与の大きい項目を抽出し、各スコアをそれぞれ1点としたところ、スコアが大きくなるほど予測死亡率が上昇した。これらの10項目を構成要素とした予後予測スコアを、CRISTEN(Clinical Risk Score for SJS/TEN)と名付けた。同スコアは発症時に既往歴と皮膚の所見のみで予後を予測できるもので、国際検証により血液検査が必要な既存のスコアと同等の精度が確認された。
今回の研究で分析した、日本国内の調査データ382例におけるCRISTENでの予測精度は、AUC(Area Under the Curve)0.876と高い水準だった。さらに、海外7か国(スイス、ドイツ、フランス、台湾、韓国、英国、カナダ)、416症例のデータによる検証でもAUC 0.827と有効性が確認された。
CRISTENで重症度を即時予測、適切な医療ケア提供に期待
CRISTENは血液検査が不要なので、一般のクリニックや、医療体制が整っていない開発途上国や地域でも簡便に使うことが可能だという。CRISTENにより重症度を即時に予測することでSJS/TEN患者に適切な医療ケアを提供することが期待される。今後は、同スコアの普及に努め、さらにCRISTENによる重症度と連結したさらなる研究を進める予定だ、と研究グループは述べている。
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