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サルコペニア治療に骨格筋由来因子「マイオネクチン」が有効な可能性-名大ほか

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2023年08月09日 AM10:30

マイオネクチンのサルコペニアに対する防御作用とそのメカニズムは?

名古屋大学は8月8日、骨格筋由来分泌因子であるマイオネクチンのサルコペニアに対する防御作用とそのメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科 分子循環器医学(興和)寄附講座の大橋浩二特任准教授、大内乗有特任教授、循環器内科学の尾崎祐太大学院生、加藤勝洋病院助教、室原豊明教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

医療技術の進歩により平均寿命は伸び続けている一方で、健康上の理由で日常生活が制限されることのない、いわゆる健康寿命との乖離が社会問題になっている。悪性疾患や脳梗塞等の心血管病に加え、加齢に伴う骨格筋量と機能低下を特徴とするサルコペニアも平均寿命と健康寿命の乖離に深く関わっている。

サルコペニアの予防・改善に運動療法の有効性は確立されているが、寝たきりなどで運動ができない場合の治療法は確立されていない。以前、研究グループは運動により発現増加を示す骨格筋由来因子、マイオネクチンが心臓虚血再灌流傷害後の心臓保護作用を有することを報告している。今回は、マイオネクチンのサルコペニアに対する防御作用とそのメカニズムを明らかにすべく研究を行った。

早期老化マウスへのマイオネクチン投与で、加齢に伴う筋重量・筋繊維面積が改善

研究では、マイオネクチン欠損(Myo-KO)マウスを作製し、対象の野生型(WT)マウスと80週齢時点で、筋力、自走距離、筋重量、筋繊維面積を評価した。Myo-KOマウスはWTマウスと比較して、筋力、自走距離、骨格筋重量、筋繊維断面積全て低下しており、早期老化を示すSAMP8マウスにマイオネクチンを筋肉内投与することで、加齢に伴う筋重量、筋繊維面積が改善することを見出した。

Duchenne型筋ジストロフィーマウス、マイオネクチン投与で筋重量低下遅延

次に、Myo-KOマウスとWTマウスに坐骨神経切断、もしくはデキサメタゾン投与による筋萎縮モデルを作製したところ、Myo-KOマウスはWTマウスと比較して、筋重量、筋繊維面積ともに低下しており、マイオネクチンの筋肉内投与により改善した。さらにDuchenne型筋ジストロフィーモデルであるmdxマウスにマイオネクチンの筋肉内投与をすることで、筋重量の低下を遅延させることも見出した。

Myo-KOマウスとWTマウスに坐骨神経切断筋萎縮モデルを作製し、萎縮骨格筋における遺伝子プロファイルをRNAシークエンスにて網羅的に解析したところ、Myo-KOマウスはWTマウスと比較して、AMPK/PGC1αシグナルが低下していることが明らかになった。これに伴い、ミトコンドリア量と機能も低下していることが明らかになった。

マイオネクチンによる筋萎縮抑制作用はAMPK/PGC1αシグナルを介する

また、マイオネクチン投与による筋萎縮抑制作用は、骨格筋特異的にAMPKシグナルを抑制するとキャンセルされ、PGC1α4の過剰発現により骨格筋量の増大を示すことから、マイオネクチンによる筋萎縮抑制作用はAMPK/PGC1α(PGC1α4)シグナルを介することが明らかになった。

マイオネクチンを標的としたサルコペニアの治療法開発を目指す

サルコペニアの確立した治療法はなく、近年筋萎縮作用を有するミオスタチンを標的とした治療法が試みられている。しかし、ミオスタチン受容体抗体、ビマグルマブによるミオスタチンシグナルの阻害により、筋肉量のある一定の増大は認められたものの、身体機能や歩行距離は改善しなかったことが報告されている。

「今回見出したマイオネクチンは骨格筋量のみならず、ミトコンドリア機能促進による骨格筋機能を改善することが明らかになり、マイオネクチンを標的としたサルコペニアの治療法開発を展開していきたいと考えている」と、研究グループは述べている。

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