週1回のインスリン注射が2型糖尿病治療を変える可能性
週に1回投与する新しいインスリン製剤「icodec」の第3相臨床試験の結果が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に6月24日掲載された。論文の筆頭著者である米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのIldiko Lingvay氏は、「このインスリンは初の週1回投与製剤であるため、当然のことながら有効性と安全性が注目された。研究結果から効果は1日1回投与製剤と同等と考えられ、2型糖尿病治療のゲームチェンジャーになるのではないか」と語っている。
画像提供HealthDay
この研究は、HbA1cが7~11%でインスリン治療を行ったことのない成人2型糖尿病患者588人(平均年齢58±10歳、女性37%)を対象として、2021年3月~2022年6月に11カ国、92施設で実施された。各群294人に二分し、1群にはicodecを週1回とプラセボを1日1回投与し(icodec群)、他の1群にはプラセボを週1回と既存の持効型インスリンであるデグルデクを1日1回投与した(デグルデク群)。564人(96%)が26週間の介入試験を終了した。
介入前後のHbA1cの変化は、icodec群では8.6%から7.0%、デグルデク群では8.5%から7.2%だった。群間差の推定値(ETD)は-0.2パーセントポイント(95%信頼区間-0.3〜-0.1)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性(P<0.01)と優位性(P=0.002)が認められた。空腹時血糖値や体重の変化には有意な群間差がなかった。
米国では国民の約10人に1人に相当する3700万人以上が糖尿病を患っており、その約95%は2型糖尿病。2型糖尿病の病態はインスリン抵抗性が主体であり生存のためのインスリン治療は要さないものの、血糖管理のために毎日のインスリン注射を必要とする患者が少なくない。しかし、毎日の注射は面倒なため、インスリン治療が必要とされる時期と実際にインスリン治療を開始する時期に、平均3~5年のタイムラグが発生していて、その間に心臓病や神経障害、網膜症、下肢の切断などの合併症のリスクが高まりやすい。Lingvay氏は、「インスリン注射が楽しいはずはなく、患者にとっては大変な負担であり生活に支障を来すこともある」と話す。それに対してicodecは、「血液中のタンパク質であるアルブミンに結合することで徐放性インスリンとして作用し、1週間を通して一定のペースで放出される」と同氏は解説して、患者の負担軽減というメリットを強調している。
今回の研究結果について同氏は、「1日1回投与タイプのインスリンと比較して、icodecはわずかに有意な血糖低下作用が見られた。1日1回製剤より優れていると断定はできないまでも、同じくらいの効果はある」と総括している。
低血糖については、icodec群では26人の患者で計53件の中等度の低血糖が発生し、デグルデク群では17人で23件発生していた。一方、重症低血糖は、デグルデク群で2件報告されたのに対し、icodec群では報告されなかった。なお、いずれの低血糖も緊急治療を要するほど深刻なものではなかったという。
米食品医薬品局(FDA)は今年中にicodecの承認に関する判断をする予定。Lingvay氏は、「FDAがわれわれの評価と同様の肯定的な判断をするなら、来年にはこの製剤の利用が可能になるだろう」と期待している。
なお、この臨床試験は、icodecの開発企業であるノボノルディスク社が資金提供して実施された。
Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock