提言は、製薬協が行った希少疾患患者の困りごとに関する調査で明らかになった「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」「社会による疾患への理解・知識が不足している」「治療選択肢が限られている・根本治療がない」――といった課題の解決に向け、まとめられた。研究開発、承認審査、薬価制度の提言からなる。
研究開発については、▽新規モダリティの研究開発の促進▽レジストリおよびデータベースの利活用の促進▽製薬企業が治験情報を必要とする患者へ提供する基盤の構築――を提言した。
遺伝子治療や再生医療などのモダリティの研究開発を後押しするため、日本人特有の変異等を含む患者の検体等の研究試料を円滑に研究利用できるバイオバンク等への研究試料の使用申請から審査を含めて1カ月以内で研究を実施できるよう求めた。
一方で、患者の特定が難しいことから、産官学医患で連携し、十分な規模と品質が担保され薬事申請等へ利活用可能な難病・希少疾患レジストリの整備が必要だとした。
患者側からも治験へ円滑にアクセスできるよう、ワンストップで治験情報を入手できるプラットフォームが確立・周知されることが望まれるとした。
開発・承認に向けた薬事制度の見直しでは、「海外では古くから投与され、有効性・安全性が確立している治療薬や海外で検証試験が実施されている場合であっても、日本人データがない場合には国内の臨床試験(第I相試験、第II相試験)が求められる」ルールの課題を指摘。
その上で「日本人のデータが非常に少ない、あるいは収集できなかった場合や、欧米主要国で承認されているなど、海外で当該治療薬の有効性・安全性が確認されている場合、または海外で実施された検証試験を用いて欧米主要国で承認申請されている場合には、海外の試験成績を用いて承認する」仕組みが必要だとした。
さらに「FDAでは、臨床試験の実施がなくRWDのみで承認される事例が報告されると共に、新たな臨床試験を実施することなく新規の用法用量や小児への適応拡大に関わる複数の承認事例も報告されている」として、日本でも同様の仕組みを検討するよう求めた。そのほか、開発早期段階からの開発支援の必要性も指摘した。
薬価制度については、「企業の研究開発への投資に見合った適切な対価の回収予見性の確保が重要」だとして、開発企業が薬剤の多様な価値を主体的に説明し、独立した第三者機関による客観的な評価に基づき薬価を算定する制度が必要と指摘。
収載後も新たなエビデンスを再評価する仕組みも求めた。