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妊娠中に食物繊維摂取量が少ない母の子ども、3歳時に発達遅れの傾向-山梨大

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2023年07月31日 AM10:58

妊娠中の低食物繊維食は子マウス脳機能の異常を引き起こす、ヒトでは?

山梨大学は7月27日、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査()」に参加の母子を対象に、妊娠中の母親の食物繊維摂取量が生まれた子どもの3歳時の発達に与える影響を調査した結果を発表した。この研究は、同エコチル調査甲信ユニットセンター(センター長:山縣然太朗社会医学講座教授)の疫学・環境医学講座の三宅邦夫准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Nutrition」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

胎児期や乳幼児期の栄養状態は、成長後のさまざまな疾患(肥満、高血圧など)のリスクと関連することがわかっている。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の推奨量や目標量に照らし合わせると、妊婦において食物繊維、ビタミンC、葉酸、鉄などのさまざまな栄養素の摂取量は、少ない状況だ。動物実験では、妊娠中の低食物繊維食が子マウスの脳機能の異常を引き起こすことが示されているが、ヒトにおける検証はなされていない。そこで今回研究では、大規模な追跡調査から妊娠中の母親の食物繊維摂取量と3歳時点での子どもの発達への影響を検討した。

母子約7万6,000組対象、妊娠中の食物繊維摂取量が子の3歳時の発達に与える影響を調査

研究では、エコチル調査に参加している10万4,062人の妊婦のデータおよび生まれた子どもの3歳時のデータのうち、調査への同意撤回、死産、流産、多胎、妊娠中の栄養調査(FFQ)の欠損、および3歳時の発達調査(ASQ-3)の欠損のある人を除いた7万6,207組の母子を対象とした。妊娠中の母親の栄養調査から、1日あたりの摂取エネルギーと食物繊維の摂取量を基に、1,000kcal摂取あたりの食物繊維の摂取量を計算。食物繊維の摂取量の5分位数を求め、最も高いグループ(Q5)から最も低いグループ(Q1)まで5つのグループに分けた。3歳時の発達は、3歳質問票にて乳幼児発達検査スクリーニング(ASQ-3)の質問を用いて調査。5つの領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)の得点をもとに発達の遅れの有無を調べた。

以上のデータを使用し、妊娠中の母親の食物繊維摂取量と生まれた子どもの3歳時の発達の遅れの有無との関連について、多変量ロジスティック回帰分析を実施。妊娠中の栄養環境と子どもの発達に関連する可能性のある因子は、妊娠前の母親のBMI、妊娠時の母親の年齢、妊娠中の母親の喫煙、飲酒、世帯収入、親の学歴、早産、生まれた子の出生体重、兄弟の数、性別、妊娠中および生後の母親のストレス、母乳栄養、1歳時点の保育施設通園、子どもへの愛着が考えられ、それらを考慮して解析を行った。

食物繊維摂取量「低」ほど、3歳時の発達遅れオッズ比「高」の傾向

研究の結果、妊娠中に食物繊維摂取量が最も低いグループの母親から生まれた子ども(Q5)は、最も高いグループの母親から生まれた子ども(Q1)と比べて、3歳時のコミュニケーション能力(オッズ比:1.51、95%信頼区間:1.32-1.74)、微細運動能力(オッズ比:1.45、95%信頼区間:1.32-1.61)、問題解決能力(オッズ比:1.46、95%信頼区間:1.32-1.61)、個人・社会能力(オッズ比:1.30、95%信頼区間:1.12-1.50)の発達の遅れが見られた。また、食物繊維摂取量が低くなるほど、3歳時の発達の遅れのオッズ比が高くなる傾向にあることがわかったという。

食物繊維以外の栄養素摂取量も少ない傾向あり、その影響も

大規模な追跡調査から、妊娠中に食物繊維の摂取量が低い母親から生まれた子どもは、3歳時点で発達の遅れが見られる傾向にあることを明らかになった。ただし、妊娠中に食物繊維が少ない母親は、食物繊維以外の栄養素の摂取量も少ない傾向があり、その影響が表れていることも考えられるという。また、サプリメントによる食物繊維摂取、離乳食や幼児期の食事の影響は考慮できていない。食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内環境は脳機能に影響をもたらすことが報告されている。今後は、エコチル調査においても腸内細菌を調べるなど、分子メカニズムを追究する研究が必要だ、と研究グループは述べている。

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