日本薬剤師会の山本信夫会長は21日の定例会見で、厚生労働省が示した2036年時点における薬剤師偏在指標1.0を下回っている12県について、15日に文部科学省が薬学6年制課程の定員抑制の例外区域とする告示案を発出したことに不快感を示した。山本氏は「薬剤師の偏在は解消しないといけないが、薬剤師を増やすのは賛成しかねる」と述べ、来月13日を期限とするパブリックコメントに日薬として意見を提出する意向を明らかにした。
定員抑制の例外措置とされたのは、青森県、山形県、群馬県、富山県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の12県。今月に開催された中央教育審議会大学分科会で了承された。
山本氏は、「総体を増やさずに、例外措置となる該当地域だけ増やすのはどういうことなのかと言われても仕方ない。片方でブレーキを踏んで、片方でアクセルを踏むのは矛盾するし、趣旨が分からない」と批判した。
また、「薬科大学が存在する地域がなぜ対象となるのか。骨抜きになると危惧している。数を頼って質が良くないと指摘されている中で、定員を増やしても良くならないのではないか」と述べ、薬剤師の質向上のために定められた薬学部定員策が実質的に行われないことを危惧した。近くパブコメを提出するため、検討を進める。
一方、医薬品の供給不安が長期化している問題に対しては、安定供給の実現に向けた薬価制度の問題点や要望などを国に提言する考えを表明した。
山本氏は、「19年に発生した後発品メーカー小林化工の不祥事以降、4年が経過しているが、現在も出荷調整が行われている」と指摘。「きちんとした医薬品供給体制を実現するため、日薬として何かしないといけない」と述べた。
供給不安を引き起こしている問題点の一つとして「毎年薬価改定」を挙げた一方、「幅広にどこに問題点があるのか考えないといけない」と語った。