社会的孤立が脳萎縮など脳の構造に及ぼす影響を、大規模認知症コホート研究で解析
九州大学は7月21日、全国8地域からなる大規模認知症コホート研究で、社会的孤立と脳萎縮および白質病変との関連を調査し、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授と同大心身医学の平林直樹講師ら、弘前大学、岩手医科大学、金沢大学、慶應義塾大学、松江医療センター、愛媛大学、熊本大学、東北大学の共同研究グループによるもの。研究成果は、「Neurology」オンライン版に掲載されている。
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社会的孤立による健康への影響が問題視されている。これまで疫学調査で、社会的孤立により認知症の発症リスクが上昇することが報告されているが、社会的孤立が脳萎縮などの脳の構造に及ぼす影響については十分に解明されていなかった。
認知症を有さない高齢者8,896人の脳データから、交流頻度と脳容積との関連を解析
研究グループは今回、「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD研究)」に参加した65歳以上の認知症を有しない8,896人の脳MRI検査や健診データを用いて、交流頻度と脳容積との関連を解析した。JPSC-AD研究は、日本の8地域(青森県弘前市、岩手県矢巾町、石川県七尾市中島町、東京都荒川区、島根県海士町、愛媛県伊予市中山町、福岡県久山町、熊本県荒尾市)における地域高齢住民約1万人を対象とした大規模認知症コホート研究だ。
交流頻度は、「同居していない親族や友人などとどの程度交流(行き来や電話など)がありますか?」という質問により、毎日・週数回・月数回・ほとんどなしに分類した。
交流頻度低下で全脳容積低下・白質病変容積上昇、抑うつ症状も確認
その結果、交流頻度の低下に伴い、脳全体の容積や認知機能に関連する脳容積(側頭葉、後頭葉、帯状回、海馬、扁桃体)が有意に低下し、白質病変容積が有意に上昇した。さらに、それらの関連に抑うつ症状が15〜29%関与した。
前向き追跡調査のデータで社会的孤立・脳の構造変化・認知症発症との関連を解明予定
今回の研究は横断研究であるため、因果関係を論じることには限界があるが、脳萎縮や認知症発症を予防する上で、他者との交流頻度を増やし、社会的孤立を防ぐことが重要であることが示唆された。
「高齢者では社会的孤立と脳萎縮、認知機能低下の間に悪循環が生じている可能性があり、高齢者の社会的孤立を防ぐ取り組みが必要だ。今後は、前向き追跡調査の成績を用いて、社会的孤立と脳の構造変化及び認知症発症との関連を詳細に検討する予定だ」と、研究グループは述べている。
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