手のひらのにおいで男女を識別可能か
手のひらのにおいは、男性と女性とで異なるとする研究結果を、米フロリダ国際大学Global Forensic and Justice CenterのKenneth Furton氏らが、「PLOS ONE」に7月5日報告した。手のひらのにおい成分を使って、約97%という高い精度で個人の性別を予測することができたという。研究グループは、この研究結果が犯罪者の追跡に役立つ可能性があるとの見方を示している。
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Furton氏らは論文の背景説明で、強盗、傷害、強姦などの犯罪はいずれも、犯人が手を使って行うため、犯人と犯罪現場との間で生物学的物質と無機物質の交換が行われることになると述べている。これは、犯人の手が何かに触れるたびに、その痕跡が犯行現場に残されるということである。指紋やDNAは、犯行現場に残される最も一般的な痕跡である。しかし、これらの証拠が必ずしも残されているわけではないし、残されていても採取可能な量が十分ではないなどの理由で法医学的証拠として使えない場合もある。
研究グループは今回、たとえ指紋やDNAなどが証拠として使えない場合でも、人間のにおいのエビデンスを集めることで、犯人の特徴を割り出し、犯罪捜査に役立てることができるのではないかという発想の下、研究を実施した。
まず、18〜46歳の黒人、ヒスパニック系、白人の男女それぞれ10人ずつ(計60人)の手のひらからガーゼで試料を採取し、ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフ質量分析(HS-SPME/GC-MS)法により、試料中の揮発性有機化合物(VOC;大気中で気体となる有機化合物の総称)を分析した。HS-SPME/GC-MS法では、HS-SPMEにより試料中の揮発性成分を抽出し、GC-MSでその質量を分析する。得られたVOCの特徴は、事前学習によりクラス分類を最適化させた部分最小二乗判別分析(PLS-DA)モデルや線形判別分析(LDA)モデルなどを用いて評価した。その結果、VOCの分析により、においの主の性別を96.67%の精度で識別できることが示された。
研究グループは、犬はにおいを手がかりに人間を、その人の生死の状態に関わりなく識別できるが、今回の研究は、においを研究室で分析して、その性別を正確に識別した初めてのものであることを強調している。論文の筆頭著者である、Global Forensic and Justice CenterのChantrell Frazier氏は、「この技術は、犬の嗅覚による捜査と組み合わせて使うことができるだろう」と述べている。
今回の研究結果は、今後さらに検証する必要があるものの、Furton氏らは、「将来的には、手のにおいの特徴を基に、犯人の詳細が割り出されるようになる可能性がある」と述べている。
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