2014年に水痘ワクチン定期接種化、発生率や医療コストへの影響は?
国立成育医療研究センターは7月19日、2014年に定期接種となった水痘ワクチンと2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴う感染対策が、子どもの水痘発生率や医療コストに与える影響を調査し、水痘の発生率は水痘ワクチンの定期接種により45.6%減少し、新型コロナウイルスに伴う感染対策が開始された2020年度以降はさらに減少していることがわかったと発表した。この研究は、同センター社会医学研究部臨床疫学・ヘルスサービス研究室の大久保祐輔室長、浜松医科大学小児科学講座宮入烈教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccine」に掲載されている。
画像はリリースより
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日本では2014年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、その後の水痘患者数の減少が報告されている。しかし、水痘ワクチンの導入による医療経済的な影響や抗ウイルス薬の使用率の変化はまだ明らかにはなっていなかった。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う感染対策が、子どもの水痘の疫学にどのような影響を与えたのかについても、これまで報告されていなかった。
過去の研究から、水痘ワクチンの導入により、帯状疱疹の発症者数が減少するという報告と、増加するという報告の両方が存在し、意見が分かれていた。しかし、日本では子どもの帯状疱疹の疫学について全国規模で評価した研究がなかった。そこで、この問題を検討するため研究を実施した。
20歳未満の約350万人分のデータを調査
株式会社JMDCの提供するレセプトデータを用いて、20歳未満の子どもを対象にデータ分析を行った。2005~2022年の18年間で、約350万人の子どものレセプトデータを抽出した。そして、水痘の発生率に影響を与える可能性のあった「水痘ワクチンの定期接種化」および「新型コロナウイルスの流行開始」に注目し、分割時系列解析(Interrupted time-series analyses)を行った。
コロナ流行後はさらに水痘発生率が低下
その結果、水痘の発生率は、2014年10月のワクチンの定期接種化により、45.6%減少していたことがわかった。また、2020年度以降の新型コロナウイルスに対する感染対策により、水痘の発生率はさらに57.2%低下していた。
水痘発生率低下に伴い、抗ウイルス薬の使用率と医療コストも低下
また、水痘の発生率の低下に伴い、2014年以降、抗ウイルス薬の使用率は40.9%減少し、医療コストも48.7%減少していた。2020年度以降はさらに抗ウイルス薬の使用率は65.7%減少し、医療費コストも49.1%減少しており、抗ウイルス薬の使用率と医療コストの低下が確認された。一方で、帯状疱疹の発生率の推移に関して、水痘ワクチンの定期接種化や感染対策の影響は、ほとんど認められなかった。
定期接種化後の出生児は、それ以前の出生児よりも水痘/帯状疱疹の累積発生率が低い
また、出生年で3つのグループに分けて(2005年~2009年[グループ1]、2010年~2013年[グループ2]、2014年~2022年[グループ3:水痘ワクチンの定期接種世代])追跡し、水痘および帯状疱疹の累積発生率を評価した。その結果、水痘の累積発生率は、水痘ワクチンの定期接種が始まったグループ3で最も低いことが明らかになった。また、帯状疱疹の累積発生率についてもグループ3で最も低いことが判明した。
新型コロナウイルス感染対策の緩和、今後も注視が必要
今回の研究から、水痘ワクチンの定期接種化と新型コロナウイルスに対する感染対策は水痘の発生率の低下、抗ウイルス薬の使用率の減少、および医療コストの削減に寄与することが示唆された。また、帯状疱疹の累積発生率は、水痘ワクチンの定期接種世代で最も低いことも明らかになった。「今後、新型コロナウイルスへの感染対策が緩められていく中で、小児の水痘や帯状疱疹の疫学は変化する可能性があり、引き続き検証していく必要がある」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース