凍結胚移植の成績は採卵を行う季節の影響を受ける?
凍結胚移植は、どの季節に採卵を行うかで成功率が変わってくるようだ。キングエドワード記念病院(オーストラリア)の不妊専門医で産婦人科医でもあるSebastian Leathersich氏らが実施した研究で、夏に採卵した卵子を用いた凍結胚移植の方が、秋に採卵した卵子を用いた場合よりも、生児出産に至りやすいことが示された。この研究結果は、「Human Reproduction」に7月5日掲載された。
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Leathersich氏は、「世界中で、自然分娩の出生率に季節差があることは以前から知られている。この差には、環境要因や行動的要因、社会学的要因など多くの要因が関係していると考えられる」と説明する。同氏は、「体外受精(IVF)の成功率を調べた研究のほとんどは、採卵から1週間以内に胚を子宮に戻す新鮮胚移植を対象としている。そのため、季節や日照時間などの環境要因が卵子の発育や胚の着床、妊娠初期の胎児の発育に与える潜在的な影響を評価できていない」と問題点を指摘する。
Leathersich氏らは今回、2013年1月から2021年12月までの間にオーストラリア・パース市の1カ所のクリニックで実施された3,659件の凍結胚移植の結果を分析した。これらの凍結胚は、1,835人の患者に対する2,155件のIVFから得られたものだった。対象女性の平均年齢は、採卵時点で34.5歳、凍結胚移植の時点で36.1歳で、胚の凍結保存期間の中央値は0.4年だった。研究グループはオーストラリア気象局の気象データを用いて、季節(春:9〜11月、夏:12〜2月、秋:3〜5月、冬:6〜8月)、平均気温(低い:7.9〜15.5℃、中程度:15.6〜20.9℃、高い:21.0〜33.9℃)、最高気温(低い:13.2〜21.2℃、中程度:21.3〜27.4℃、高い:27.5〜43.3℃)、最低気温(低い:0.1〜9.8℃、中程度:9.9〜14.4℃、高い:14.5〜27.8℃)、日照時間(短い:0〜7.6時間、中程度:7.7〜10.6時間、長い:10.7〜13.3時間)による出産アウトカムを評価した。
その結果、夏に採卵した卵子を用いた凍結胚移植では、秋に採卵した卵子を用いた凍結胚移植に比べて、生児出産のオッズが30%高いことが明らかになった(オッズ比1.30、P=0.02)。この結果は、凍結胚移植時の季節で調整しても変わらなかった。また、日照時間が「長い」ときに採卵された卵子を用いた凍結胚移植でも、「短い」ときに採卵された卵子を用いた凍結胚移植に比べて、生児出産のオッズが28%高く(同1.28、P=0.008)、この結果は凍結胚移植時の日照時間に左右されないことも示された。一方、採卵時の気温と生児出産との間に関連は認められなかった。しかし、凍結胚移植の日の最低気温が「高い」場合、「低い」場合に比べて生児出産のオッズが18%低下していた(同0.82、P=0.040)。
Leathersich氏は、「不妊治療の成功に影響を与える数多くの要因の中で最も重要なのは年齢だ。しかし、今回の研究により、環境要因とそれが卵子の質と胚の発育に及ぼす影響の重要性が増すこととなった」と語る。
ただし、この研究はすでに起こったことをさかのぼって調べる後ろ向き研究であるため、夏の採卵が凍結胚移植の成功率を高める原因であることが証明されたわけではない。Leathersich氏らは、「今回の研究結果を、異なる条件や異なる治療プロトコルを持つ他の施設でも再現する必要がある」と述べている。
▼外部リンク
・Season at the time of oocyte collection and frozen embryo transfer outcomes
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