日本でクルミアレルギー患者が急激に増加中
国立成育医療研究センターは7月13日、同センターに来院した子どもなど45家庭を対象に、家庭内のホコリ中に含まれるクルミアレルゲンに関する研究を行い、家庭内における環境アレルゲンとして、クルミアレルゲンの存在が明らかになったと発表した。この研究は、同センターアレルギーセンターの大矢幸弘センター長、安戸裕貴医師、山本貴和子医師らと、株式会社ダスキン開発研究所の共同研究によるもの。研究成果は、「Allergology International」に掲載されている。
画像はリリースより
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小児の食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎があると発症しやすいことがわかっている。アトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能の低下や炎症が起きており、環境中の食物アレルゲンなどが皮膚に侵入して免疫細胞に認識され、IgE抗体が産生(経皮感作)されてしまう。これよって食物アレルギーを引き起こすといわれている。近年、日本においてクルミアレルギー患者が急激に増加している。また、食物アレルギーの発症要因として、環境アレルゲンとしての食物アレルゲンの存在が注目されている。研究グループは先行研究で、3歳児の寝具のすべてから鶏卵アレルゲンがあることを報告している。
クルミアレルギー11軒を含む45の家庭を調査、各家庭を訪問しホコリも採取
今回研究グループは、国立成育医療研究センターアレルギー科の外来に来院した食物アレルギーの子どもの家庭など計45軒(食物アレルギーの子どもがいる家庭32軒、食物アレルギーの子どもがいない家庭13軒)を対象に調査した。なお、食物アレルギーの子どもがいる家庭32軒の内訳は、クルミアレルギー11軒、ピーナッツアレルギー13軒、卵アレルギー18軒(複数のアレルギーを持つ場合もあり)だった。
2021年8月と11月に、週単位での家庭におけるクルミの摂取状況を継続的にアンケート調査。ダスキン開発研究所の研究員が日程を決めて各家庭を訪問し、リビングルーム、ベッド上のホコリを同一手法で採取し、ELISAにより採取したホコリ中のクルミのアレルゲン量を測定した。家庭内のクルミ摂取量は、ホコリ採取日から遡って6週間分のアンケートデータに基づいて、週平均の摂取量を算出。クルミ主要アレルゲンJug r 1への感作については、ホコリ採取日の前後1年以内に測定されたJug r 1特異的IgE値を使用した。
Jug r 1に対する感作が陽性の子のベッド上のホコリにクルミアレルゲン量を多く認めた
その結果、解析対象の約3分の1の家庭(リビングルームのホコリ:13家庭、子どものベッドの上のホコリ:14家庭)において、クルミアレルゲンを検出した。家庭内におけるクルミの週間消費量が4g以上の家庭では、4g未満の家庭と比較して、ホコリ中のクルミアレルゲンの量が多く認められた。また、クルミの主要アレルゲンであるJug r 1に対する感作が陽性であった子どものベッド上のホコリ中からは、クルミアレルゲン量を多く認めた。具体的には、クルミアレルゲン200ug/g以上の検出がJug r 1感作陰性家庭は0%(検討対象9家庭)に対し、Jug r 1感作陽性家庭は50%(検討対象6家庭)だった。
クルミアレルギー増加に関与の可能性
この研究は、あくまでも家庭内のホコリ中にクルミアレルゲンが存在することを示すもので、生活環境にあるホコリの中のクルミアレルゲンとクルミアレルギー発症の因果関係を示すものではない。しかし、家庭内でも、ホコリの中にクルミタンパク(アレルゲン)が存在しており、子どものクルミアレルゲン感作と関係がある可能性が示された。「昨今のクルミアレルギー患者の増加の一因として、環境アレルゲンとしてのクルミアレルゲンの存在が関与する可能性を示しており、注視していく必要がある」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース