中央社会保険医療協議会薬価専門部会は12日、新薬のイノベーション評価をめぐり議論した。顕在化しているドラッグラグ・ロスの問題に対し、薬価制度の見直しで対応することについて、長島公之委員(日本医師会常任理事)は「ドラッグラグ・ロスは研究段階の要素が大きいので、その見直しをするのが先決ではないか」と反発。他の委員からは、患者への影響など実態を把握した上で議論する必要性などが提起された。
長島氏は「医薬品のイノベーションの研究開発費等について、公的医療保険の財源で手当てするのは違うことも主張したい」と述べ、製薬業界が提案するドラッグラグ・ロス解消に向けた新規収載時の評価制度に反対姿勢を強調した。
新薬の薬価水準が欧米よりも低いとの指摘に対しても「高すぎる薬価設定は米国でも問題になっており、欧米と同じ薬価にすることでドラッグラグがなくなるのは言い過ぎではないか」と語気を強めた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「薬価制度の抜本的見直しには時間が足りない。現行制度で議論すべき」との考えを示し、「ドラッグラグ・ロスは患者にどのような問題が起きているのか、具体的な品目を細かく見ていく必要がある」と実態把握が必要とした。
一方、石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、成人用よりもドラッグラグ・ロスが深刻な小児用医薬品のイノベーション評価で理解を求めた。「小児は成人に比べて収益が見込めないところで手をつけにくい。加算が設けられているが、再審査期間にコストを回収できるレベルではない」と説明。「成人と異なる開発の難しさや剤形・規格の必要性を踏まえ、ルールの見直しが必要」とした。