ゾルゲンスマ治療後も臨床的なニーズ残るSMAの乳幼児を対象とした試験
米バイオジェンは6月30日、RESPOND試験の新たなデータを発表し、ゾルゲンスマ(R)(一般名:オナセムノゲンアベパルボベク)による遺伝子治療後にスピンラザ(R)(一般名:ヌシネルセン)で治療を受けた、脊髄性筋萎縮症(SMA)のほとんどの参加者において運動機能が改善されたと発表した。このデータは、フロリダ州オーランドで開催されたCure SMAによる「SMA Research & Clinical Care Meeting」で発表された。
スピンラザはSMAの乳幼児、小児および成人の治療薬として世界60か国以上で承認され、全世界で1万4,000人以上がスピンラザの治療を受けている。スピンラザは体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパク質の量を継続的に増やすことで、SMAの根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)である。 SMAの発症部位に到達できるよう、スピンラザは中枢神経系に直接投与される。
RESPOND試験は、ゾルゲンスマによる遺伝子治療後に臨床ニーズが満たされていないSMAの乳幼児を対象に、スピンラザによる治療後の有効性と安全性を評価する、2年間継続中の第4相非盲検試験。
今回発表された、RESPOND試験29人の参加者の6か月後の有効性に関する中間結果において、大部分の参加者においてハマースミス幼児神経学的検査セクション2(HINE-2)の平均合計スコアがベースラインから増加し、運動機能の改善が見られた。また、SMN2遺伝子のコピー数が2の参加者(n=24)は、HINE-2のスコアが平均5ポイント以上改善し、SMN2遺伝子のコピー数が3の参加者(n=3)は全員のスコアが改善した(参加者数が少ないため、ベースラインからの変化の平均値は計算していない)。ベースラインの運動機能が最適でないと治験責任医師が報告していた参加者の大部分(27人中25人)において、改善が見られたことも明らかとなった。
有害事象(AE)については、試験開始後の日数の中央値が230.5日の時点において、38人中13人(34%)の参加者で重篤なAEが報告されたが、スピンラザに関連する、あるいは試験の中断に至った重篤なAEはなかった。ゾルゲンスマ治療後にスピンラザを投与された参加者で新たに特定された安全性の懸念はなかった。その他のRESPOND試験の中間結果についても学会で発表された。
スピンラザ治療の実臨床下において、継続に従って改善を示す
今回、乳幼児期発症のSMAに対するスピンラザの実臨床における効果を評価するため、体系的文献レビューとメタ解析の結果についても発表された。スピンラザの治療ベネフィットを包括的に理解するために、実臨床でのエビデンス創出の重要性が明らかになり、実臨床下において観察された運動機能の改善と運動マイルストーンは、臨床試験の結果を上回るか同等で、スピンラザ治療が長期継続するに従って引き続き改善を示すことが明らかになった。
継続的な皮下投与を可能にする埋め込み型デバイスを開発中
また、同社はAlcyone Therapeutics社と共同でアンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬の継続的な皮下投与を可能にするための初の埋め込み型デバイスを開発している。米国食品医薬品局がThecaFlex DRx(TM)システム(ThecaFlex)のピボタル試験を開始するための「治験用医療機器に対する適用免除」を承認した。今夏、SMA患者にスピンラザを投与するためのThecaFlexの安全性と性能を評価するPIERRE試験の最初の組み入れが開始される予定だ。
SMAコミュニティへのデータ提供で、スピンラザ治療のさらなるベネフィットの可能性示唆
キングス・ドーターズ小児病院の小児神経科医であるクリスタル・プラウド医師は、「遺伝子治療が全ての運動ニューロンを治療できるわけではなく、その後疾患が進行する可能性があることがわかってきた。RESPOND試験は、ゾルゲンスマの治療を受けた後も臨床上のアウトカムが期待に満たなかった一部のSMA患者に残るアンメットニーズの特徴を明らかにしようとしている。今回の中間結果は、ゾルゲンスマの後のスピンラザ治療を評価する初の臨床試験データをSMAコミュニティに提供し、スピンラザ治療のさらなるベネフィットの可能性を示唆している」と述べている。
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・バイオジェン プレスリリース