コロナ禍の子どもへの影響、未就学児の発達に対しては?
京都大学は7月11日、首都圏のある自治体の全認可保育所に通う1歳または3歳の乳幼児887人に対して調査を行い、コロナ禍を経験した群とそうでない群の間で3歳または5歳時の発達を比較した結果を発表した。この研究は、同大、筑波大学人文社会系の深井太洋助教、慶應義塾大学、東京財団の共同研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Pediatrics」にオンライン掲載されている。
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多くの既存研究により、コロナ禍が子どもの生活や健康に負の影響を与えたことが示唆されている。例えば、コロナ禍で子どもたちの間でメンタルヘルスの問題が増え、睡眠の質が下がり、運動不足や体重が増加する子どもが増えたことなどが明らかになっている。また、複数の研究が、コロナ禍で就学児の学力が下がったことを示している。しかし、コロナ禍が未就学児の発達にどのような影響を与えたのかは、これまでほとんどわかっていなかった。
コロナ禍経験あり/なし、3歳または5歳保育園児887人の発達を比較
そこで今回の研究では、コロナ禍以前から実施していた保育園児に対する調査を分析し、コロナ禍と乳幼児の発達の関連を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887人に対し、2017~2019年までの間に1回目の調査を実施。2年後2回目の調査を行い、追跡期間中にコロナ禍を経験した群とそうでない群の間で、3歳または5歳時(各年4月1日時点の年齢)の発達を比較した。乳幼児の発達は、「KIDS乳幼児発達スケール」を用いて保育士が客観的に評価した。分析では、子どもの月齢、性別、1回目調査時の発達、保育園の保育の質、保護者の精神状態、出生時体重、家族構成、世帯所得、登園日数などの影響を考慮した。
5歳時コロナ禍経験群は平均4.39か月の発達遅れ、3歳時は発達進んだ領域も
分析の結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39か月の発達の遅れが確認された。一方、3歳時点では明確な発達の遅れは見られず、運動、手指の操作、抽象的な概念理解、対子ども社会性、対成人社会性の領域では発達が進んでいた。
発達の個人差・施設差拡大、3歳・5歳ともに
また、コロナ禍で、3歳・5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになった。質の高い保育を提供する保育園に通っていた子は、コロナ禍においても3歳時点の発達が良い傾向にあった。一方、保護者が精神的な不調を抱える家庭の子は、コロナ過で5歳時点の発達の遅れが顕著だったという。
保護者の在宅勤務増加・保護者以外との触れ合い機会制限が影響か
今回の研究では、3歳と5歳で対照的な結果が示された。コロナ禍で保護者の在宅勤務が増えたことが、3歳時点でいくつかの領域で発達が進んだ理由の1つではないかと考察している。この年齢の子どもは、大人とのやり取りを通してさまざまなことを学ぶため、大人との1対1のコミュニケーションが発達において重要だという。在宅勤務によって保護者が子どもと密に接する時間が増えたことで、コロナ禍が3歳児の発達にポジティブな影響を与えた可能性があるとしている。
一方、5歳児は発達段階において社会性を身につける時期であり、他者との交流が重要だ。コロナ禍によって保護者以外の大人や他の子どもと触れ合う機会が制限されたことが、発達に負の影響を与えた可能性があると考えるとしている。
感染状況に留意しつつ、速やかにコロナ禍前の保育環境に戻すことが重要
今回の研究結果は、コロナ禍を経験した群において、5歳時点で発達の遅れが生じていることを示唆している。また、3歳、5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになった。コロナ禍で発達の遅れが生じた子どもに対し、積極的な支援を行うことが求められる。また、今後の感染状況に留意しつつ、なるべく速やかにコロナ禍前の保育環境に戻していくことが乳幼児の発達のうえで重要だ、と研究グループは述べている。
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