鶏卵アレルギー児、卵タンパク質を与えるタイミングや量は?
東京慈恵会医科大学は7月11日、臨床研究に参加した380人のデータを解析し、早期新生児期の母の鶏卵摂取は母乳栄養児の鶏卵アレルギーの発症に影響しないことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大分子疫学研究部の浦島充佳教授と国立病院機構相模原病院臨床研究センター小児科の永倉顕一氏、佐藤さくら氏、海老澤元宏氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。
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食物アレルギーは世界中で増加傾向であり、乳幼児の約10%に発症する。特に日本では鶏卵が食物アレルギーの原因として最多を占めており、発症予防の対策が求められている。近年、鶏卵アレルギー児に対して、生後3~6か月など乳児期早期からの卵タンパク質摂取が免疫寛容を誘導して鶏卵アレルギーの発症リスクを下げると報告されている。しかし、いつからどの程度の卵を与えると良いのか悪いのかはわかっていない。
親がアレルギー疾患の新生児対象、生後5日間に母が卵を食べた群と食べなかった群を比較
研究グループは2019年のABC試験で生後3日間に母乳に加えた数cc単位以上の人工栄養(粉ミルク)の摂取が牛乳アレルギーを含む食物アレルギーの発症を増加させると報告した。一方、生後4日目以降にミルクを加えても食物アレルギーは増えていなかった。この結果を受けて、「生後3日など腸内細菌叢がまだ整っていない新生児早期に粉ミルクを飲むことでグラム単位の牛乳タンパク質抗原が腸管内に入る。その結果、腸管粘膜に炎症が起こす。炎症により腸管粘膜の透過性が亢進し、食物抗原が体内に吸収されやすくなる。そのことで、牛乳アレルギーだけではなく、食物アレルギー全般が増えた」と仮説を立てた。逆に、母親が牛乳を摂取しても食物アレルギーが増えたわけではない。母乳を介して児が摂取する牛乳抗原量はマイクログラム単位で、直接粉ミルクを摂取する場合の数百万分の1だ。そこで研究グループは「生後5日など母親が卵を食することで、母乳中にマイクログラム単位の鶏卵タンパク質が分泌される。これが児にとっての自然の減感作療法となり、卵アレルギーの発症を予防できる」と仮説を立て、研究を進めた。
今回、両親のどちらかにアレルギー疾患のある新生児を対象に、生後5日間に母が卵1個/日を連日摂取する児(鶏卵摂取群)と同時期に母が卵を完全除去した児(鶏卵除去群)に無作為に割り付けて調査を実施した。
生後12か月時鶏卵アレルギー発症率、有意差なし
その結果、生後12か月時の鶏卵アレルギーの発症率は、鶏卵摂取群9.3% vs 鶏卵除去群7.6%と有意差はなかった。また、生後3~4日の母乳中の卵タンパク質が検出された児の割合は11% vs 2%と鶏卵摂取群で有意に多かった。生後12か月時の卵に対する感作、牛乳・小麦アレルギーの発症率も有意差はなかった。また、有害反応の発生は0例であったという。
出産後1日1個程度の卵摂取は問題なし
今回の研究結果により、出産後早期に母親が1日1個の卵を食しても安全であることを示したとしている。生後3か月から卵を児に与えると卵アレルギーが減ることが他の研究グループに示されているが、生後2か月、1か月ではどうかがわかっていない。さらに、離乳食として児に直接与えるべきなのか、それとも母乳を介して間接的に与えるべきなのか、例えば「出産後7日より1か月間、授乳中の母親が1日1個の卵を摂取すると卵を避ける場合と比較して児の卵アレルギーの発症リスクを予防できるか」といったランダム化臨床試験を組むのも一案だ、と研究グループは述べている。
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・東京慈恵会医科大学 プレスリリース