蘇生後の脳において脳血流量を一定に保つ機能の有無は不明
大阪大学は7月7日、院外心停止蘇生後患者において、非侵襲的手法により脳血管自動調整能(Cerebrovascular Autoregulation:CVAR)を評価し、CVARが検出されない時間が増えるほど、死亡率が有意に上昇することを示したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の舘野丈太郎特任助教、塩崎忠彦助教(救急医学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism」にオンライン掲載されている。
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院外心肺停止に対する治療の標準化が進み、治療成績向上のための取り組みが世界的に進められているが、心拍が再開してもいまだ多くの方に神経後遺症(低酸素性虚血性脳損傷)を生じているのが現状である。脳機能が正常に保たれていれば、脳血管自動調整能、すなわち全身の血圧が変化しても脳血流量を一定に保とうとする機能(CVAR)が存在することが知られているが、蘇生後の脳においても、このような反応が生じるかはこれまで不明だった。脳内の酸素需給バランスの指標とされる、脳局所酸素飽和度(cerebral regional oxygen saturation:crSO2)は血圧による影響を受けるが、研究グループは、この相関を利用してCVARの有無を評価する方法に着目し、蘇生後脳におけるCVARの有無、そして生命予後との関連を評価した。
脳局所酸素飽和度と血圧の相関からCVARを判定、未検出時間が長いほど生存率低下
今回、研究グループは、同大医学部附属病院高度救命救急センターに救急搬送された、100人の院外心停止患者を解析対象とした。心拍再開後96時間、crSO2と平均血圧の連続モニタリングを行い、移動相関係数を算出し、CVARの有無を判定した。CVARの未検出を生体にとって悪い暴露(時間依存性共変量)と仮定して、生命予後との関連をCox比例ハザードモデルにより評価した。100人の解析対象者のうち、神経予後良好なCerebral Performance Scale(CPC)1〜2の24例の全症例、神経予後不良(CPC3〜5)76例中65例(88%)でCVARの検出を認めた。Cox比例ハザードモデルを用いた解析では、CVARの未検出時間が長くなるほど、生存率が有意に低下することが示された。
神経後遺症を減らす、脳循環に基づいた全身管理方法の開発につながる
「今回の研究成果には大きく二つの意義がある。第一に、蘇生後早期の臨床データから死亡率の高いサブグループを特定可能となることで、より強化した治療介入を行うべき集団の特定に役立てることができる。さらに、回復する可能性がある方の早期の治療差し控えを回避することに役立つ可能性がある。第二に、脳循環を適正に保つ集中治療管理を行うことが生命予後の改善を示唆するものであり、脳循環に基づいた全身管理方法を開発することが蘇生後の神経後遺症を減じるブレイクスルーとなる可能性があると考えている」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU