dose dense TC療法のカルボプラチンを静脈内/腹腔内投与で比較の国際共同試験
岡山大学は6月28日、進行卵巣がんに対する抗がん剤の腹腔内投与の有効性を検討する国際共同試験iPocc試験の結果を発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)の長尾昌二教授と国際医療福祉大学の藤原恵一教授らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine Evidence」に掲載されている。
卵巣がんは発症早期から播種を引き起こす。そのため、手術で取り除くことが難しく、非常に治りにくいがんの1つとされている。1990年頃から卵巣がんの播種を治す目的で腹腔内化学療法が試みられてきた。しかし、腹痛や感染などのトラブルが多いなど、さまざまな理由から広く用いられることはなかった。2000年代に比較的副作用が少なく、刺激の少ないされる抗がん剤カルボプラチンが腹腔内化学療法に適していること、また、おなかの中に大きな塊がある進行した状態の患者にも効く可能性があることなどがわかった。そのため、今回、臨床試験で有効性を検討した。
今回のiPocc試験では、進行卵巣がんの標準治療の1つであるdose dense TC療法(パクリタキセルを毎週、カルボプラチンを3週ごとに点滴で静脈内に投与)を受けた患者とdose dense TC療法のカルボプラチンを静脈内ではなく腹腔内に投与した患者を比較した。
腹腔内投与で再発リスク17%低下、腹腔内感染リスクなど10%程度
試験の結果、腹腔内投与によって再発のリスクが17%下がることが判明。また、その効果はお腹の中に大きな塊がある状態であっても認められたとしている。また、抗がん剤の腹腔内投与で引き起こされる懸念のあった腹痛や腹腔内感染のリスクは、10%程度だった。
保険適用に向けて準備中
現状では抗がん剤の腹腔内投与は保険診療で認められていないため、保険適用に向けて準備を進めているという。今後、保険診療として認められれば、患者に広く適用できる。また、すでに保険適用されているPARP阻害薬と組み合わせることで、根治が難しいとされてきた進行卵巣がんの治癒の可能性が飛躍的に高まることが期待される、と研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース