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CKDを有する高齢心不全、入院中腎機能悪化と退院時低身体機能に関連-神戸大

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2023年06月21日 AM10:42

高齢心不全患者の約70%は慢性腎臓病を合併

神戸大学は6月20日、慢性腎臓病を保有した入院期高齢心不全患者を対象に、入院中の腎機能悪化(Worsening renal function:WRF)の重症度と退院時低身体機能の関連性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科博士後期課程大学院生の久保一光氏、井澤和大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Geriatric Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本は、世界でもかつて類を見ない超高齢社会に突入している。そのため、高齢者の増加に伴い心不全患者が急増し、心不全パンデミックが懸念されている。高齢心不全患者は、合併症の保有が多く、その中でも慢性腎臓病を合併する割合(合併症数÷患者数)は70%に及ぶといわれている。特に慢性腎臓病を保有した高齢心不全患者は、入院中にフレイルやサルコペニアなどの低身体機能が顕著に進行する傾向がある。したがって、これらの低身体機能の予測因子の早期の特定と対策の重要性が高まっている。

研究グループは、先行研究において高齢心不全患者の入院中のWRFが退院時の日常生活動作(ADL)の低下の要因であることを明らかにしている。先行研究では重症WRFは軽症-中等症WRF・WRFなしに比べ、予後や有害転帰に影響を及ぼすことがわかっていた。しかし、慢性腎臓病を保有した高齢心不全患者のWRFの重症度と退院時低身体機能との関連については明らかではなかった。そこで今回は、WRFの重症度に着目し、退院時低身体機能との関連性について調査した。

血清クレアチニンの変化量によりWRF重症度を分類、身体機能などとの関連を解析

研究対象者は、2017年~2020年の間に急性心不全または慢性心不全急性増悪により入院し、心臓リハビリテーションを実施した連続患者573人のうち65歳未満、入院前歩行不能、入院中の死亡、データ欠損、非慢性腎臓病などの患者を除外した196人。入院中のWRFの重症度は、血清クレアチニンの入院時からの入院中の最大値までの変化量によって、重症WRF(≧0.5mg/dL)、中等症から軽症WRF(≧0.2~<0.5mg/dL)、WRFなし(<0.2mg/dL)の3群に分類した。その上で、背景因子、臨床パラメータ、入院前歩行レベル、入院時と退院時のADL、身体機能について比較検討した。また、入院中のWRFの重症度と低身体機能との関連を統計学的に調査。退院時身体機能はShort Physical Performance Battery (SPPB)を用いた。

軽症から中等症のWRF、WRFなしの患者では関連示さず

その結果、重症WRFの割合は28.1%だった。3群間における入院前歩行レベルに差はなかった。しかし、重症のWRFは退院時低身体機能や低ADLに陥ることが明らかとなった。身体機能に影響する早期離床や栄養状態、入院前歩行レベルなどの要因の影響を取り除く統計解析を行っても、入院中の重症のWRFは退院時低身体機能の強い関連要因であることが明らかとなった。しかし、軽症から中等症のWRF・WRFなしには、その関連は示されなかった。

退院時低身体機能の予防に、入院中のWRF重症化回避が重要

近年、心不全の急性期治療で使用される利尿剤の中で、腎保護効果のある新薬が開発されている。入院時の腎機能やWRFの重症度に応じて、これらの腎保護効果のある利尿剤の早期使用により入院中のWRFの重症化や慢性腎臓病の進行を予防できる可能性がある。また、慢性腎臓病を保有した高齢心不全患者の退院時低身体機能に関連する要因として、入院中の重症WRFに加えて、早期離床、栄養状態、入院前歩行レベルなどがあった。

「慢性腎臓病を保有する高齢心不全患者の退院時低身体機能を予防するためには、急性期治療過程におけるWRFの重症化の回避、早期離床や栄養状態の改善、在宅における介護保険下によるリハビリサービスの拡大なども重視すべき課題と考えられる。今後は、急性期病院のみならず、回復期から維持期(生活期・在宅)に至るまで途切れることのない多職種によるチーム戦略の構築が不可欠だ」と、研究グループ述べている。

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