根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍、いまだ標準治療未確立
慶應義塾大学は6月15日、PD-1免疫チェックポイント阻害薬(製品名:オプジーボ)について、同大が主導して行われた医師主導の多施設共同治験の結果に基づき、小野薬品工業株式会社が「切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」の効能または効果に対する国内製造販売承認事項の一部変更承認申請を行ったことを発表した。申請の基となった「上皮系皮膚悪性腫瘍に対する抗PD-1抗体療法の医師主導による多施設共同第II相臨床試験」は、同大医学部皮膚科学教室の舩越建准教授、中村善雄専任講師らの研究グループが中心となって実施された。
上皮系皮膚悪性腫瘍は、上皮系腫瘍として系統別分類される皮膚がんの総称であり、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病、皮膚付属器がん(汗腺がん、脂腺がん、毛包がんなど)などが含まれる。現在、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍の治療については、国内の皮膚悪性腫瘍取扱い規約、皮膚悪性腫瘍ガイドラインならびに米国の全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)ガイドライン、実臨床の実態を踏まえると、標準治療と呼べるものはない状況である。そのため新規治療法が強く望まれていた。
上皮系皮膚悪性腫瘍を対象とした治験は、国内外で初めての試みであり、また疾患の希少性から企業による臨床試験の実施が困難な一面があった。そのため、同治験は、医師主導で計画・立案され、小野薬品工業の支援を受け、実施された。
医師主導P2試験に33人が参加、奏効率で有効性示す
同治験は、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍の患者を対象にオプジーボの有効性および安全性を検討することを目的とした医師主導による多施設共同非盲検非対照第II相臨床試験である。参加施設は、同大病院、東北大学病院、新潟県立がんセンター新潟病院、国立がん研究センター中央病院、名古屋大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、和歌山県立医科大学附属病院、九州がんセンターだった。
2019年7月から開始された治験には約2年間で33人が参加し、患者はオプジーボ480mgを4週間間隔で投与された。その結果、主要評価項目の全体の奏効率(中央判定)で有効性が示された。
2023年5月、厚労省の優先審査対象に
研究グループは治験の結果、申請について、「これまでに有効性のある治療法がなかった上皮系皮膚悪性腫瘍の患者にとって画期的な治療法になる可能性があり、希少疾病用医薬品の指定の基に承認申請に至ったことは大きな一歩だ」と、述べている。
なお、オプジーボは、厚生労働省より、2023年5月23日、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍を効能または効果とする希少疾病用医薬品の指定を受け、優先審査の対象となっている。
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