緊急申し入れでは、保険財源確保を目的とした度重なる薬価引き下げにより製薬産業全体の体力が大きく低下していること、医薬品の供給不安に起因した需給調整によって国民と医療現場に医薬品が届かない現状を指摘。これらを打開するため、▽安定供給の実効性確保▽イノベーション促進▽セルフメディケーション推進――の3項目を施策として実行するよう求めた。
安定供給確保については、引き下げありきの薬価改定に対して、毎年改定の是非も含めて薬価制度を抜本的に見直すよう求めた。最低薬価のあり方の見直しをはじめ、安定供給を可能にする新たな薬価制度改革を構築することも必要としたほか、現在の状況を生み出したとして中医協のあり方を見直すことも求めた。
イノベーション促進では、革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ロス改善のため、革新的新薬の特許期間中の薬価維持のほか、世界中から投資、技術、人材を呼び込み、多様な人材が力を発揮する創薬エコシステム・イノベーションを構築し、研究者のキャリア形成に役立てることが必要とした。
セルフメディケーション促進では、高齢者をはじめ国民全体にセルフMの選択肢を広げ、医療費適正化を図るため、安全性が高く効き目が確認されている医療用成分を積極的にスイッチOTC化すべきとした。疾病の早期発見、早期受診を促すため、検査薬のOTC化推進、セルフMを促進する税制の普及に努めることとした。
玉木雄一郎代表は提出後に記者団の取材に応じ、「年末の予算編成過程が勝負なので、4大臣会合の中で製薬業界を育成する視点も踏まえた意見を厚労省に言ってもらい、より良い安定供給確保とイノベーション推進につながる制度を実現してほしい」と述べた。
業界の賃上げにも言及。「コストの価格転嫁がこの業界だけできておらず、賃金を上げられていない。持続的な賃上げの観点からも、ただ薬価を引き下げるトレンドを変えるべきとも伝えた」とした。