マルチモーダルAI、複数の検査データを同時に解析可能
日本電気株式会社(NEC)は6月13日、医療分野における電子カルテとAI技術の融合研究を進め、前立腺がんを対象に医療ビッグデータを多角的に解析するマルチモーダルAIを構築したことを発表した。この研究は、同社、理化学研究所(理研)、日本医科大学と複数の大学病院の共同研究によるもの。研究成果の一部は、「第5回日本メディカルAI学会学術集会」(2023年6月17日~18日)で発表される。
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医療が高度に専門化する中、医療ビッグデータを多角的に解析するツールが求められている。しかし従来の医療AIシステムは単独の検査データを対象とするものが多く、複数の検査データを利用して統合的に判断できないことが課題となっていた。
今回構築されたマルチモーダルAIを活用することで、複数の検査データを同時に解析することが可能となる。この成果を基に、NECが保有する電子カルテをベースとした各種データを統合するプラットフォーム技術、理研が開発した広範囲画像解析技術や特徴選択などを活用したマルチモーダルAI、そして日本医科大学をはじめとする複数の大学病院の医師による信頼性の高い検証データを組み合わせ、各種医療データを多角的に解析する医療AIシステムの実用化を目指す。
前立腺がん再発までの年数によって再発メカニズムが異なる可能性を示唆
このAIについて検証するにあたり、日本人男性に最も多いがんの一つである前立腺がんを対象に、手術前の電子カルテデータや病理生検画像などを用いたマルチモーダルAI解析を実施した。その結果、手術後から再発までの年数によってAIが捉えた予測因子のパターンに違いが見られることが判明した。この結果は、がん再発までの年数によって再発メカニズムが異なる可能性を示唆している。
さらに、生成系AIにも使われる機械学習技術を応用した次元削減の改良や、AIが捉えた予測因子の多次元的な最適化を行うことで、既存手法と比べ、手術から5年後までの再発予測の精度を約10%向上させた。今後、さらに対象データを拡大し実用化に向けた検証をする予定としている。
「この医療AIシステムにより、治療計画の最適化や疾患の早期発見、データの安全な運用が可能となり、治療期間の短縮による医療費の削減や、医療従事者の業務負荷の軽減と効率化が期待される」と、研究グループは述べている。
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