年齢一致の健常高齢者と脳卒中患者とで違いを検証、自作の不整地路で
畿央大学は6月1日、脳卒中患者は不整地歩行中に、歩行安定性の低下、立脚期の股関節最大伸展角度の低下、遊脚期のヒラメ筋活動時間の増加を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院博士後期課程の乾康浩氏と森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Gait and Posture誌」に掲載されている。
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脳卒中患者は、中枢神経系の損傷により歩行障害を有し、屋外の地域社会での歩行が困難になる。これは、社会参加を妨げ、生活の質の低下にもつながる。屋外環境のなかでも、不整地は摂動の予測が困難であり、適応性が低下した脳卒中患者では特に難しくなることが予想される。そのため、リハビリテーション専門家は脳卒中患者の不整地歩行の特徴を捉えることが必要だ。
今回の研究では、予測困難な摂動が生じる不整地での脳卒中患者の特徴を調べることを目的とし、自作の不整地路を用いて年齢を一致させた健常高齢者との違いを検証した。
患者で歩行安定性・立脚期股関節伸展角度が低下、遊脚期のヒラメ筋活動時間が増加
実験中、歩行速度、歩行安定性を評価するための立脚期と遊脚期に分けた3軸の体幹の加速度のRoot Mean Square、麻痺側下肢の最大関節角度、麻痺側下肢の立脚期と遊脚期に分けた平均筋活動および筋活動時間を測定。その結果、歩行速度は健常者と違いは見られないものの、歩行安定性は立脚期と遊脚期のすべての軸において脳卒中患者で低下していた。さらに、脳卒中患者の特徴として、立脚期股関節伸展角度の低下、遊脚期ヒラメ筋活動時間の増大が見られた。
研究グループは、この結果のうち、歩行安定性の低下と立脚期股関節伸展角度低下に関しては、不整地歩行中に運動制御が困難になった結果と考えているという。一方で、遊脚期ヒラメ筋活動時間の増大に関しては、脳卒中患者の歩行時の衝撃吸収のための代償戦略であることが知られており、不整地で生じる大きな衝撃に対応するために代償戦略を強めたと考察している。
今後は、脳卒中患者内での特徴の違い・縦断的な経過を調査
今回の研究成果は、予測困難な摂動が生じる不整地での脳卒中患者の歩行の特徴を明らかにしており、リハビリテーション専門家が脳卒中患者の屋外歩行の問題を考える際に着目すべき点を示しているという。今後は、脳卒中患者内での特徴の違いや縦断的な経過を調査する必要がある、と研究グループは述べている。
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