厚労省は、ニトロソアミン類が医薬品に混入するリスクを懸念し、2021年から各製造販売業者に自主点検を要請。住友ファーマは、ノルトリプチリン製剤全製品を対象にニトロソアミン類の検出リスクを評価した結果、同類の一種であるN-ニトロソノルトリプチリンが検出された。同成分は癌原性試験等のデータがなく、発癌性の有無は不明とされている。
同社の健康影響評価では、10年を超えずに同剤150mgを毎日服用した場合、生涯で約2万3000人に1人が過剰に癌を発症する程度のリスクがあるとされた。
評価結果は、ICHのガイドラインで許容されるリスクを超えることから、同社は同剤服用による健康への影響評価を情報提供した上で、服用中の患者には他剤への切り替えを検討するよう医療現場に周知するとした。
ただ、投与量の急激な減少と投与中止は嘔吐、頭痛、倦怠感等の離脱症状を引き起こす恐れがあるとして、他剤への切り替えが行われるまで当面の間は、患者のアクセスを確保するとしている。
一方、過剰なN-ニトロソノルトリプチリンへの曝露を防ぐため、暫定管理値を4.267ppmに設定し、同値を超える製品は出荷しない。今後の測定結果を踏まえ、さらに低減可能か検討する。
混入原因は特定されておらず、製造方法や原材料等を見直して毒性試験の実施も検討する。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の発足した04年から今年5月末時点で、同剤の癌に関連する国内副作用症例報告や発癌に関する研究報告はなく、海外でも、ノルトリプチリン製剤について、製造販売業者や規制当局が回収措置を行ったとの情報は確認されていない。
同剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などが奏効しにくい患者が服用し、継続服用する患者の多さや離脱症状が比較的発現しやすい。
三村將参考人(慶應義塾大学予防医療センター特任教授)は、「リスクがベネフィットを上回る場合は製造中止を求めることになると思う」としつつ、「同剤の提供を継続することが望ましい」と述べた。