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妊娠中の血中マンガン濃度「高」、子の複雑型CAKUT発症リスク減に関連-九大

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2023年06月07日 AM10:49

先天性腎尿路異常「CAKUT」、胎児期の金属ばく露との関連は不明

九州大学は6月6日、エコチル調査のデータを使用して、胎児期の5つの金属のばく露と3歳までに診断された先天性腎尿路異常(Congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)の関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大小児科エコチル調査福岡ユニットセンターの岩屋医員、大賀正一センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science of the Total Environment」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、~小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

CAKUTは、多種多様な泌尿器系の形態異常を含み、先天形態異常全体の20~30%を占め、小児期に末期腎不全になることも多い疾患。原因としてさまざまな種類の遺伝子異常が報告されているが、そのような異常が見つかるのは患者の一部で、胎内環境の影響が推測されている。これまでに、母親のビタミンA・葉酸の欠乏、飲酒、薬剤摂取や、肥満・糖尿病のような慢性疾患がリスク要因として報告されてきた。一方で、胎児期の金属のばく露とさまざまな先天形態異常との関連が報告されているが、CAKUTとの関連はほとんど調べられていなかった。

孤発型351人・複雑型79人+対照群の子ども、5つの金属へのばく露との関連を解析

そこで今回の研究では、胎児期の5つの金属(鉛、カドミウム、水銀、セレン、)へのばく露とCAKUTに関連があるかどうかを調査。CAKUTは、他の臓器の形態異常を伴っていないタイプの孤発型と伴うタイプの複雑型に分類でき、それぞれ違った病因が推定されるため、別々に金属ばく露との関連を検討した。

今回の研究では、令和元年(2019年)10月に確定した、約10万組の妊婦と出生した子どものデータを使用。解析対象は、子どもの性別・在胎週数・出生体重と、母親の金属血中濃度・世帯収入・年齢・教育歴および妊娠中の喫煙・飲酒・葉酸の使用に関するデータが揃っている8万5,806人の子どもとした。コホート内症例対照研究として解析するために、CAKUTのある子どもと対照群を1:4の比率で抽出した結果、孤発型CAKUTの子ども351人と対照群の子ども1,404人、それから、複雑型CAKUTの子ども79人と対照群の子ども316人が最終的な解析対象となった。

胎内での金属へのばく露は、妊娠第2期・第3期の母体血中の鉛、カドミウム、水銀、セレン、マンガンの濃度を測定することで推定。また、アウトカムとしてのCAKUTは、カルテ転記(出生時と1か月時)と質問票(6か月、1歳、2歳、3歳)を用いて、3歳までに医師の診断を受けたものを収集し。CAKUT以外の先天形態異常の情報も同様に収集し、CAKUTを孤発型と複雑型に分類した。

マンガン欠乏、複雑型CAKUTリスクを増加させている可能性

一つ一つの金属とCAKUTの関連を検討するために、ロジスティック回帰分析を実施。それぞれの金属濃度を対数変換して解析した場合、高いセレン濃度は孤発型CAKUTのリスク上昇と関連していた。一方で、高い鉛濃度と高いマンガン濃度は、複雑型CAKUTのリスク減少と関連していた。しかし、このロジスティック回帰分析は、5つの金属が混在した状態での影響を考慮に入れていないため、それを考慮して、ベイズ推計カーネルマシン回帰分析という特殊な方法を用いて解析を追加した。

その結果、高いマンガン濃度と複雑型CAKUTリスク減少のみに関連が認められた。マンガンは必須元素の1つで生体内のさまざまな機能に関与しており、胎児の臓器形成段階での重要性が示唆されていることから、マンガン欠乏が複雑型CAKUTのリスクを増加させている可能性があると考えられた。また、このことより、子どもの先天形態異常を予防するためには、金属の過剰だけでなく欠乏にも注目する必要があるかもしれない、としている。

これらの結果を踏まえて、今後、他の疫学研究で同様の結果が得られるのか、妊娠した動物に与えるマンガンの量を調整してCAKUTの発生率が変化するのかなどを検証する必要がある、と研究グループは述べている。

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