日本の心臓移植待機症例から見出された新規心臓難病
大阪大学は6月2日、中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)の患者数や予後について調査を行い、その結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科中性脂肪学共同研究講座の平野賢一特任教授(常勤)、同講座の原康洋特任研究員(常勤)、同大医学部附属病院未来医療開発部データセンターの山田知美特任教授(常勤)らの研究グループが、日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業・厚生労働省難治性疾患政策研究事業の一環で行ったもの。研究成果は、「Molecular Genetics and Metabolism Report」、「JACC:Advances」に掲載されている。
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TGCVは、2008年に日本の心臓移植待機症例から見出された新規心臓難病である。罹患臓器・細胞の主たるエネルギー源である長鎖脂肪酸(Long chain fatty acids, LCFA)の細胞内代謝異常の結果、蓄積するTGによる脂肪毒性とLCFAが供給されないためのエネルギー不全を生じると考えられている。2009年から厚生労働省、AMED等の難治性疾患関連事業として疾患概念確立、診断基準策定、特異的治療法の開発が行われてきた。TGCV研究班は今回、オールジャパンの研究組織として情報収集、レジストリ構築等を行い、現時点での患者数、予後について検討した。
原発性TGCV11例、特発性TGCV629例、拡張型心筋症の予後と同等
2022年12月現在、TGCVの累積診断数は640例、内訳は原発性TGCVが11例、特発性TGCVが629例だった。前者では6例が、後者では87例が死亡していた。特発性TGCV患者の3年生存率は80.1%、5年生存率は71.8%だった。TGCVの予後は、代表的指定難病である拡張型心筋症のそれと同等であることがわかった。
「本症の早期の指定難病化、治療法開発加速のために産・患・官・学のより一層の連携、医学研究・臨床試験における患者・市民参画(Patient-public involvement)の取り組みの促進が必要だ」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU