約10万組の親子のヨーグルト摂取頻度と中耳炎罹患を調査
東北大学は5月25日、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)のデータの解析から、ヨーグルト摂取が高頻度なほど、乳幼児期の中耳炎発症リスクが低下することがわかったと発表した。この研究は、同大病院の土谷忍助教、鈴木淳准教授、有馬隆博教授、八重樫伸生教授、大学院医学系研究科の門間陽樹准教授、大学院医工学研究科の永富良一教授、岩手医科大学の池田怜吉講師、東北福祉大学の土谷昌広教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Probiotics and Antimicrobial Proteins」に掲載されている。
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中耳炎は最も一般的な小児疾患の一つであり、治療選択としてプロバイオティクスも推奨されている。一方、生活習慣としてのヨーグルト摂取にどの程度の効果があるかについては不明だった。研究グループは、全国規模の出生コホート研究であるエコチル調査のデータを使用し、全国9万5,380組の親子を対象に、乳幼児期の中耳炎罹患とヨーグルトの習慣的な摂取頻度との関連について検討を行った。
具体的には、子どもの乳幼児期の中耳炎の罹患(6か月、1歳、1歳半、2歳時点で、過去6か月間に医師による診断を受けたかを質問)と、母子それぞれのヨーグルト摂取頻度(週あたり、母親には妊娠時、子どもでは1歳時に確認)との関連を調査した。ヨーグルトの週あたりの摂取頻度については、「ほとんどなし」「1-2回」「3-4回」「5-6回」「毎日」で5群に区分して解析した。自記式質問票には母親(出産年齢や妊娠期間、喫煙・飲酒歴など)や子ども(性別や授乳方法など)の要因に関する質問も含まれており、中耳炎の罹患と関連する項目として調整に用いた。
ヨーグルトを毎日摂取する子ども、非摂取と比べ37%罹患リスク「低」
解析の結果、母子それぞれのヨーグルト摂取頻度が高いほど、中耳炎の罹患リスクは減少することがわかった。また、成長とともにその効果は減弱する傾向があることもわかった。最も顕著な効果は生後6か月時の中耳炎発症との関連で認められ、摂取しない群と比較して、毎日ヨーグルトを摂取する子どもでは37%のリスク低下を認め、統計的に有意であることが示された。さらに、生後2年間における中耳炎の累積罹患回数(最大4回)を対象とした解析も行ったところ、ヨーグルトの習慣的な摂取頻度が高いほど中耳炎の罹患リスクが低下することが示された。
「妊娠中の母親のヨーグルト摂取習慣」も効果は弱いが、有意に罹患リスクを低下
興味深いことに、妊娠中の母親が高頻度にヨーグルトを摂取すること(間接的な摂取)についても、弱い効果ながら統計学的に有意な差が認められた。のど(咽喉)と中耳は直接つながっており、咽喉の細菌叢は中耳炎の発症因子としても重要視されている。また、乳児の咽喉の細菌叢の出現は、出生直後の母子間の接触から始まると考えられている。習慣的なヨーグルト摂取、すなわちプロバイオティクスは免疫機構を中心とした咽喉の環境に影響し、感染症の発症予防の観点からも推奨されている。今回の結果では、直接的な子どものヨーグルト摂取習慣だけでなく、間接的な「妊娠期の母親のヨーグルト摂取習慣」も弱い効果(約6%)ながら、有意に中耳炎の罹患リスクを低下させた。
妊娠期からのプロバイオティクス習慣が有用である可能性
今回の研究で、母子それぞれにおいて、ヨーグルトを習慣的に高頻度で摂取することが、乳幼児期の中耳炎罹患のリスク低下と関連することが確認され、妊娠期からプロバイオティクス習慣が有用である可能性についても示された。しかし、研究グループは「この研究をもって乳製品の積極的な摂取を推奨するものではない」とし、「大規模コホート研究のため、摂取した菌の種類や量といった条件については不明であり、将来的には、それらについてより良く計画された追加研究が必要となる」と、述べている。
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