同院の2021年度月平均処方箋枚数は、外来が約870枚で医薬分業率は約95%、入院は約9000枚。1日当たり300~400枚を処理している。こうした中で20年ぶりに調剤機器の更新を行うことになった。
医療安全を前提に機器を選定し、錠剤一包化鑑査支援システムや全自動秤量散薬分包機、最終鑑査支援システムなど10数種類の機器・システムを取り入れた結果、調剤インシデント件数は有意に減少し、導入前6カ月間の44件から導入後6カ月間は23件まで減少。処方箋1000枚当たりの月平均インシデント件数は0.39から0.20に減った。
ヒヤリハット件数では薬剤名称の取り間違いが17件から1件、規格・剤形のエラーも19件から1件に減少した。機器を導入することで、計数のエラー検出は60件から98件と有意に増加した。
山本氏は「業務負担軽減よりも、インシデントをとにかくゼロに近づけたかった」と述べた。調剤インシデントが起きた場合、状況の把握から患者対応、インシデントレポート作成、物性によっては患者宅に届ける必要など追加対応に追われ、カバーエリアが広い北海道では数百キロ離れた土地まで届けなければならないこともある。機器導入による医療安全向上が薬剤部スタッフの時間を創出するとしている。
薬剤部の労働力確保に向け、補助員の活用も進めている。医療安全に関連するシステムや機器を必ず使用し、補助員が書類整理や業務データ入力、ピッキング、棚への補充を行う。麻薬伝票入力や持参薬業務の補助にも拡大しており、調剤に領域を限定させることなくタスクシフトを行っている。
補助員業務は週・月単位でローテションさせ、誰にでもその仕事ができるよう属人化を防ぎ、手順書も整備することで業務標準化も進めている。
また、調剤室や注射剤室、薬品情報室など薬剤部業務を棚卸しし、業務内容やタスクシフトの移行状況、薬剤師鑑査の要否など、薬剤師から補助員にシフトできるものがないか全て書き出している。
山本氏は、▽薬剤師にしかできない業務(処方鑑査、計量混合、疑義照会、最終鑑査、服薬指導)▽薬剤師の指示に基づき、補助員が実施する業務▽補助員単独で判断・行動しても差し支えない業務――の三つに整理し、「その業務に薬剤師免許が必要か法令・通知を見ながら判断している。薬剤部で定期的に業務の棚卸しをすることが重要」と述べた。
その上で、「タスクシフトは手段であり、タスクシフトを進めた先に薬剤部は何を目指すのか、何を成し遂げていくかを考えることが大事。業務効率化は業務の安全に必ずついてくる」と語った。