2022年度における調剤薬局の倒産件数は、過去最多となった前年度から約35%減の15件となったことが、東京商工リサーチの調査で明らかになった。コロナ禍での受診控えの動向が落ち着き、調剤医療費が回復したことが要因。一方で、大手薬局との競合などによって「中小薬局の淘汰はこれから本番を迎える可能性がある」との見方も示した。
コロナ禍による感染予防や体調管理の強化で病院の受診控えが広がり、処方箋枚数が落ち込んだ。その結果、売上が減少した調剤薬局の倒産が相次ぎ、20年度と21年度は2年連続で最多件数を更新していた。
しかし、22年度はコロナ禍前の水準まで倒産件数が減少して15件となり、過去最多を記録した前年度の23件から34.7%減少した。
同社は「受診控えが一転し、感染者数の減少などで、処方箋枚数が戻って調剤医療費が回復したことが大きい」と分析している。
倒産の内訳を原因別に見ると、「販売不振」が10件で全体の66.66%を占め、偶発的原因など「その他」が2件(13.33%)、赤字累積の「既往のしわ寄せ」が1件(6.66%)で続いた。
負債額別では、「1000万円以上」が6件(40%)、「5000万円以上」が5件(33.33%)、「1億円以上」が4件(26.66%)の順で、5億円以上は見られなかった。
15件の負債総額は10億7200万円で、前年度の25億0500万円から57.2%減少した。
資本金別では、「100万円以上500万円未満」が9件(60%)、「500万円以上1000万円未満」が4件(26.6%)、従業員数(正社員)別では、4人未満が11件(73.3%)を占め、小規模倒産が多く見られた。
今回の調査では、倒産件数が減少傾向にあることが示された格好となったが、同社は「電子処方箋などのデジタル化やネット注文、在宅調剤への対応、ドラッグストアを含めた大手薬局との競合はさらに激しさを増している。中小の調剤薬局の淘汰はこれから本番を迎える可能性が高まっている」と分析した。