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膵神経内分泌腫瘍のSTZ療法、治療効果を予測可能なマーカー発見-東京医歯大

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2023年05月24日 AM11:18

進行した膵神経内分泌腫瘍、STZ療法が有効だが正確な病態や治療効果との関連性は不明

東京医科歯科大学は5月9日、進行性の膵神経内分泌腫瘍で用いられるストレプトゾシン療法の治療効果予測マーカーとしてMGMT(O6-メチルグアニン-DNAメチル化酵素)遺伝子の重要性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科肝胆膵外科学分野の小野宏晃講師、八木宏平大学院生、田邉稔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

膵神経内分泌腫瘍は希少疾患として知られているが、近年その発生率は増加している。膵神経内分泌腫瘍に対する根治治療としては外科手術が行われる。しかし、外科切除不能な場合には薬物療法などが行われるが治療方法は決して多くはない。アルキル化剤であるストレプトゾシン(STZ)による化学療法は、腫瘍細胞の分裂スピードを示す指標Ki-67指数が高く、進行した膵神経内分泌腫瘍に特に有効であることが報告されている。しかし、その背景となる膵神経内分泌腫瘍の病態は明らかとはなっていない。

研究グループはMGMT遺伝子に着目し、手術によって切除された膵神経内分泌腫瘍において免疫組織化学染色を用いてMGMT遺伝子の発現解析をした。さらに、MGMT遺伝子発現とSTZ療法の治療効果との関連性を評価した。

142症例を免疫組織化学染色で評価、腫瘍Gradeに応じてMGMTが発現

研究グループは、手術を施行した膵神経内分泌腫瘍142症例におけるMGMT遺伝子レベルを免疫組織化学染色によって評価した。MGMT発現は142例中97例(68.3%)で陽性であり、陰性は45症例(31.7%)だった。腫瘍Gradeに関しては、MGMT陽性97例はNET-G1:71例、NET-G2:21例、NET-G3:5例だった。MGMT陰性45例の中ではNET-G1:9例、NET-G2:35例、NET-G3:1例だった。

注目すべき点は、NET-G1(9/80例、11.2%)よりもNET-G2(35/56例、62.5%)においてMGMT陰性の頻度が有意に上昇していることである。今まで膵神経内分泌腫瘍におけるGradeに応じたMGMT発現解析は行われておらず、今回の研究によって初めて明らかとなった。

STZ治療効果との関連、MGMT陰性例で治療効果が有意に優れる

膵神経内分泌腫瘍のMGMT発現解析が評価された142例のうち、特に進行病変である19例においてSTZ療法が行われた。STZ治療効果との関連においては10例がMGMT陽性、9例がMGMT陰性だった。MGMT発現陽性の膵神経内分泌腫瘍ではSTZ療法が効果を示さず、4例(40%)が100日以内に病変の進行を認めた。しかし、MGMT発現陰性の膵神経内分泌腫瘍の多くは、STZ療法が治療効果を示し1年以上の長期にわたって病勢コントロールが可能な5例(55.6%)を含む良好な治療成績が認められた。STZを投与したMGMT陽性10例のうち、6例が病状が進行することなく病勢安定(SD)、4例が治療効果を認めず病変進行(PD)だった。一方でMGMT陰性9例では、5例がSTZ療法が効果を示し部分奏効(PR)、4例が病状が進行することなくSDであることがわかった。このようにMGMT陰性例では、STZ療法において治療効果が有意に優れていることが示された(p=0.009)。

無増悪生存期間(PFS:Progression-free survival)によるMGMT発現とSTZ治療成績の関係については、Kaplan-Meier解析によりMGMT発現陽性はSTZベースの治療レジメンの予後不良と有意に関連していることが明らかになった(p=0.042)。PFS中央値は、MGMT陰性例で20.8か月、MGMT陽性例で9.4か月だった。MGMT発現とSTZ療法に対する治療成績との関連を初めて明らかにした。

膵神経内分泌腫瘍に対するSTZ療法の治療効果予測マーカーとして期待

今回の研究では、MGMT陰性の膵神経内分泌腫瘍において、腫瘍の悪性度が有意に高く、特にNET-G1よりもNET-G2で有意にMGMT陰性の頻度が高いことを明らかにした。さらに、MGMT発現が陰性の膵神経内分泌腫瘍に対してはSTZ療法の治療成績が良好であることを示した。以上のことから、NET-G2において特にSTZ療法の治療効果が期待される。「MGMT発現は膵神経内分泌腫瘍に対するSTZ療法の治療効果予測マーカーであり、今後はMGMT発現に応じてSTZ治療を選択する『コンパニオン診断』となることが期待される」と、研究グループは述べている。

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