皮膚に貼るパッチが幼児のピーナツアレルギーの治療に有望
皮膚に貼る「ピーナツパッチ」が、命を脅かすこともあるピーナツアレルギーを持つ4歳未満の幼児を守るのに役立つ可能性が、新たな臨床試験で示された。フランスのバイオテクノロジー企業であるDBV Technologies社が開発したViaskin Peanutと呼ばれるこのパッチは、ピーナツアレルギーの幼児を微量のピーナツタンパク質に徐々に曝露させることで免疫系を慣れさせようとする経皮免疫療法の一種だ。米コロラド大学医学部および米コロラド小児病院のMatthew Greenhawt氏らによるこの研究は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月11日掲載された。
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米国では、小児の2%がピーナツアレルギーを持っていると推定されている。ピーナツアレルギーはほとんどの場合、成人になっても治ることはない。非営利団体Food Allergy Research and Education(FARE)によると、ピーナツは小児の間で最も一般的な食物アレルギーであり、成人でも3番目に多い食物アレルギーだという。
ピーナツアレルギーを持っている人では、微量のピーナツを摂取しただけでも激しいアレルギー反応が生じることがある。そのため、アレルギーを持つ当人やその親は、食品ラベルを慎重に確認してピーナツに曝露しないように注意する必要がある。治療法としては、米食品医薬品局(FDA)が2020年に承認したPalforziaと呼ばれる経口免疫療法薬がある。これはパウダー状のピーナツを使った製品で、リンゴソースなどの食品に混ぜて使うことができる。しかし、Palforziaの投与が認められているのは4歳以上であり、4歳未満の幼児に対してFDAが承認した治療法はないのが現状だ。目下、ピーナツアレルギーの幼児に対する経口免疫療法の開発が進められてはいるが、Greenhawt氏は、「ある治療法が有効であるかどうかは人によって異なることがあるので、複数の選択肢を用意しておくことは常に良いことだ」と話す。
今回の報告は、二重盲検ランダム化プラセボ対照食物経口負荷試験でピーナツアレルギーが確認された1〜3歳の幼児362人(平均年齢2.5歳、女児68.8%)を対象にした第3相臨床試験の結果だ。これらの対象児にアレルギー反応を引き起こすのに必要なアレルゲンの用量は300mg以下だった。対象者は、ピーナツパッチ(介入群、244人)、またはプラセボパッチ(対照群、118人)のいずれかを使用する群にランダムに割り当てられ、それを12カ月間、毎日装着した。試験開始から12カ月時点でアレルギー反応を引き起こす用量のピーナツタンパク質に曝露させ、治療効果を評価した。
最終的に、対象者の84.8%が試験を完了した。治療の有効性が確認された対象児の割合は、介入群で67.0%であったのに対し、対照群では33.5%にとどまっていた(リスク差33.4ポイント、95%信頼区間22.4〜44.5、P<0.001)。重篤な有害事象は,介入群で8.6%、プラセボ群で2.5%、アナフィラキシーはそれぞれ7.8%(19人)と3.4%(4人)に発生した。介入群では、治療に関連した重篤な有害事象が0.4%(1人)、治療に関連したアナフィラキシーが1.6%(4人)に発生したが、対照群ではいずれも発生しなかった。
Greenhawt氏の説明によると、このパッチを用いた経皮免疫療法は、皮膚が体内で最も大きな免疫系器官であることを「利用」している。つまり、経口免疫療法よりも少ない量のピーナツタンパク質の使用で済むため、経口免疫療法で起こり得る胃もたれや喉の炎症、息切れなどの全身的な副作用を回避することが可能なのだという。
では、効果については、経口免疫療法と経皮免疫療法のどちらが高いのだろうか。この研究論文の付随論評を執筆した米国立アレルギー感染症研究所のAlkis Togias氏によると、この二つの治療法を直接比較した臨床試験はまだ実施されていないため、明確なことは言えないようだ。ただし同氏は、2022年に発表された、ピーナツアレルギーを持つ1〜3歳児を対象とした経口免疫療法の臨床試験の結果に基づき、「経口免疫療法の方が、免疫系の脱感作を誘導する効果が高い可能性が考えられる」との見方を示している。その一方で、前述のように、安全性についてはパッチによる治療の方が経口免疫療法よりも高いことにも言及。現状では、Viaskin PeanutはFDAに承認されていないが、同氏は、「もし承認されれば、それはとても良いことだ」と期待を示している。
▼外部リンク
・Phase 3 Trial of Epicutaneous Immunotherapy in Toddlers with Peanut Allergy
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