血圧や体重などの値を個人が特定できない形で研究に利活用できる「仮名加工医療情報」の創設を柱とした改正次世代医療基盤法が17日に参議院本会議で成立した。仮名加工医療情報を作成・提供する事業者や仮名加工医療情報の提供を受ける製薬企業や研究機関は、国の認定が必要となる。来年の施行に向け、利活用者の認定基準の検討やガイドラインの改訂を行う。
仮名加工医療情報は、他の情報と照合しない限り個人を特定できないよう加工した情報となる。次世代医療基盤法で対象としていた匿名加工医療情報は、体重が「50~55kg」のように幅を持たせて提供され、検査値で特異な値は削除されるほか、生年月日は月単位で丸めるなどして提供されるため、研究に使いにくいとの課題があった。
一方で仮名加工医療情報は、体重や血圧などの値がそのまま提供されるほか、個人の医療情報から特異な値や希少疾患名等の削除は不要としているため、希少疾患の研究にも活用できる。
今回の法改正で、仮名加工医療情報を作成・提供する事業者を国が事前認定する仕組みを新たに設けた。認定事業者は、個人情報保護法の特例として個々人から同意を取る必要なく、事前通知(本人の求めに応じて提供停止可能)だけで医療機関から医療情報の提供を受けられる。
仮名加工医療情報の提供先は国が認定した製薬企業などの利活用者に限定することとした。他の情報と照合して元の個人情報となる本人を識別する「再識別」と仮名加工情報の第三者に対する提供を禁じた。
一方、匿名加工医療情報とナショナルデータベース(NDB)や介護DBなどの公的DBを連結解析できる状態で研究者等に提供することも可能とした。
法改正の附帯事項として、▽今後の利活用推進に向け政府の司令塔機能を明確にし、個人情報を徹底的に保護することを第一に考え、あるべき全体像を示すと共に、必要に応じ速やかに制度を整備すること――など8項目が付された。