第一三共は16日、後発医薬品事業を行う第一三共エスファを保険薬局事業などを行うクオールホールディングス(HD)に譲渡すると発表した。注力する癌事業など新薬事業にリソースを振り向けることなどが狙い。クオール側としては、医師、薬剤師、患者に受け入れやすいオーソライズドジェネリック(AG)に強いエスファをグループ化することで、同社製品の安定供給確保を図るほか、薬局現場のニーズを踏まえた付加価値製剤の開発、在庫動向を踏まえた生産・供給計画にも生かせると見ている。2024年4月までにクオールはエスファ株51%を取得し、将来的に完全子会社化する予定だ。
これは同日、両社の取締役会で決議された。第一三共は、新薬、後発品、一般用医薬品などヘルスケア製品を揃えた「総合的に日本の医療に貢献するリーディングカンパニー」を謳ってきたが、約800億円の売上規模で好調に推移していた後発品事業を250億円(全株式分)で売却することになった。従業員、労働条件は維持される。
第一三共は、エスファを売却することで、注力する癌事業のリソース強化のほか、クオール側の下で長期的にシナジー、新規事業の創出などで医療関係者、患者などの期待に応え続けられると判断したとしている。
クオール側としては製薬企業の製品の開発・製造の川上から販売までの川下までのサービスをカバーする総合ヘルスケア企業を確立する戦略をとっており、エスファのグループ化により川上サービスの強化を図る。
エスファをグループ化することで、傘下の約900薬局で把握したニーズなどを生かし「付加価値の高い医薬品の開発や、AGを中心とした顧客ニーズに応える製品を生み出すことにより、医療貢献と事業の発展につながる」としている。
また、グループ薬局での一定の需要が読めるため生産・供給計画に反映できるほか、採算性も見込めるとしている。
クオール側としては、連結売上高3000億円(今年度末見込み1800億円)、営業利益250億円(同100億円)を中期目標に掲げており、エスファが加わることで連結売上高を2600億円まで拡大することができる。製薬企業のグループ化は2019年の藤永製薬に続く形だが、両社統合は現時点ではないとしている。
なお、エスファの取り扱い製品数は86成分218品目、うちAGは18成分。