MECOM(EVI1)変異のRUSAT、22家系が報告
東北大学は5月16日、橈骨尺骨癒合を伴う血小板減少症(以下、RUSAT)患者で実際に同定されたMECOM(EVI1)変異を導入したマウスの作製に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科遺伝医療学分野の永井康貴医員、新堀哲也准教授、青木洋子教授、同生物化学分野の五十嵐和彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood Advances」(電子版)に掲載されている。
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RUSATは、希少疾患の先天性骨髄不全症候群のうち、先天性血小板減少症に分類される遺伝子疾患。前腕の骨の癒合のほか、心臓、腎臓、聴力、指など多くの器官にも症状が生じることがある。新堀准教授らは、2015年にRUSATの原因遺伝子の一つであるMECOM(EVI1)を世界で初めて同定。MECOMはMDS1 and EVI1 complex locus遺伝子の略称。転写開始点の違いによりMDS1-EVI1(MDS1とEVI1が連続したもの)とEVI1を発現する。
その後、報告が蓄積され、MECOM(EVI1)に変異のあるRUSATは、現在まで22家系が報告されている。RUSAT患者で同定される遺伝子変異は、MECOM(EVI1)内でも特定の領域に集中しており、その領域がRUSATの発症に重要な働きをしていることが予測されていた。
MECOM(EVI1)変異H752Rを有するマウス作製、成長に従い血小板減少
今回の研究では、患者で同定されたMECOM(EVI1)の変異であるH751R変異(751番目のアミノ酸がヒスチジンからアルギニンに変化)に相当するマウスの変異H752Rを持つマウスを作製。この変異は、前述の変異が集中する領域に存在する。
作製したマウスは見た目には変異のないマウスと違いがなく、オスマウスでは体重が軽い傾向があった。変異マウスでは、成長に従い血小板の減少が明らかになった。また、血液を作る骨髄の細胞について解析を行い、作製したマウスでは血液細胞のもととなる造血幹細胞が減少していることを発見した。この結果を受けて、骨髄の細胞を減少させる薬剤(5-フルオロウラシル)を投与して、骨髄の状態が回復していく過程を調べた。その結果、作製したマウスでは血小板と白血球の数の回復が遅れることを見出した。
今回の研究により、RUSATの原因となるMECOM(EVI1)変異が個体で造血幹細胞の減少を来すことが初めて確認された。明らかな前腕の骨の癒合は認めなかったが、ヒトと症状が異なるメカニズムの解明は、今後の研究に委ねられるとしている。
MECOM(EVI1)が発症関連の疾患、病態の解明と治療法開発に期待
作製したマウスの血液での変化は顕著なものであり、血液を作るメカニズムにおいてMECOM(EVI1)がどのように働いているか、作製したマウスをさらに詳細に解析することでRUSATのみならずMECOM(EVI1)が発症に関連する疾患の病態の解明と治療法開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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