日本では小児3年生存率71.0%、成人はさらに不良
新潟大学は5月15日、T細胞性急性リンパ性白血病について、成人と小児の多施設共同臨床試験の結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科小児科学分野の今井千速准教授(病院教授)、日本小児がん研究グループ(JCCG)と成人白血病共同研究機構(JALSG)の研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Haematology」にオンライン掲載されている。
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小児および若年成人の急性リンパ性白血病は、日本で年間約600例発症するとされ、そのうち10〜15%がT細胞性急性リンパ性白血病だ。従来、日本におけるT細胞性急性リンパ性白血病の治療成績は悪く、2006~2010年に発症した15歳未満の小児において3年の生存率は71.0%。成人においては、さらに不良だった。
全国125施設で2011年から臨床試験開始、2021年まで経過観察
研究グループは、T細胞性急性リンパ性白血病の生存率を改善する目的で、2011年から臨床試験を開始した(臨床試験名:ALL-T11)。この臨床試験には、全国125施設が参加した。2021年まで経過が観察され、今回、結果が発表された。
3年生存率91.3%、無イベント生存率も10%以上向上
同試験では、全国で0~25歳未満の349人が治療を受け、3年後の生存率は91.3%。従来の成績と比べて大きく改善した。欧州の従来型治療の成績と比較すると、無イベント生存率(3年後までに治療不応や再発なく生存する割合)は75.9%から86.4%へと10%以上成績が向上した。
改善理由は、ネララビン追加/L-アスパラギナーゼやデキサメタゾン投与方法の工夫など
理由として、新薬ネララビンを従来の治療に追加したこと、従来から使われてきた薬剤L-アスパラギナーゼの投与量と回数を増やしたこと、使用するステロイドの種類をデキサメタゾンに変更したことなどがある。
放射線照射・造血幹細胞移植を受ける患者割合を半減
さらに、治療成績が向上しただけでなく、副作用の強い頭蓋放射線照射や同種造血幹細胞移植を受ける患者の割合を減らすことができた。これにより、成長期にあるこどもの長期にわたる副作用を軽減できたとしている。
ALL-T11では、手本とした欧州の従来型治療と比較して、無イベント生存率が向上し、放射線照射と造血幹細胞移植を受ける患者の割合を半減できた。
後継試験、0~65歳まで年齢層を広げて実施中
現在、ALL-T11の後継試験であるALL-T19試験(特定臨床研究)を実施中だ。この試験では、ALL-T11の治療戦略を用いつつ、さらに年齢層を広げて0~65歳までの患者に対して各年齢層に適切な強度の治療を提供する工夫が施されており、全年齢層における標準治療の策定に貢献することが期待されている、と研究グループは述べている。
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