クランベリーの尿路感染症予防効果、新たなデータで示される
クランベリー製品の摂取が尿路感染症(UTI)の予防に役立つという説は何十年も前から唱えられているが、50件の研究のレビューから、その説を支持する結果が得られたことが報告された。フリンダース大学(オーストラリア)医学・公衆衛生学部公衆衛生学科のJacqueline Stephens氏らによるこの研究結果は、「Cochrane Library」に4月17日掲載された。Stephens氏は、「濃縮液や錠剤・カプセル状のクランベリー製品の摂取が、UTI再発患者や小児など一部の人に有効であることについて、初めて合意を得ることができた」と話している。
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UTIは誰にでも生じ得る感染症だが、肛門と尿道の位置関係などの解剖学的理由から特に女性に頻発する。研究論文の背景情報によると、18歳以上の女性の約60%が一生のうちに一度はUTIに罹患し、また約30%が年に平均2〜3回の再発を経験するという。感染場所はたいていの場合は膀胱で、排尿痛や頻尿、その他の煩わしい症状が生じる。
UTIの予防に対するクランベリーの有効性に関するこのレビュー結果は、1998年に最初に発表された。以後、2003年、2004年、2008年、2012年に内容が改訂されている。今回報告された5回目の改訂では、新たに追加された26件の研究を含む計50件のランダム化比較試験または準ランダム化比較試験(試験参加者の総計8,857人)がレビュー対象とされた。
50件の研究のうち45件の研究が、6つの参加者グループを対象に、クランベリー製品をプラセボ、または特定の治療を行わない場合と比較していた。このうちの26件(解析対象6,211人)の研究を対象に、細菌培養でUTIと診断された有症状の患者のアウトカムについてメタアナリシスを行った。
その結果、信頼性が中等度のエビデンスとして、クランベリー製品の摂取によりUTIリスクが30%低下することが示された〔相対リスク(RR)0.70、95%信頼区間(CI)0.58〜0.84〕。また、6つの参加者グループごとに解析したところ、UTIのリスクは、有症状の再発性UTIを有する女性で26%(解析対象1,555人、RR 0.74、95%CI 0.55〜0.99)、小児で54%(同504人、0.46、0.32〜0.68)、尿路カテーテル留置などの医学的介入によりUTIに感染しやすい人で53%(同1,434人、0.47、0.37〜0.61)、それぞれ低下することが明らかになった。また、信頼性が低いエビデンスとして、施設入居の高齢の男女(同1,489人、0.93、0.67〜1.30)、妊婦(同765人、1.06、0.75〜1.50)、膀胱を空にできない神経因性膀胱の成人(同464人、0.97、0.78〜1.19)ではクランベリー摂取によるUTIリスクの低下は認められなかった。なお、今回のレビューで確認された、クランベリー製品摂取で最もよく生じる副作用は、胃のもたれであったという。
Stephens氏は、「この研究では、世界各国で実施された研究のエビデンスが集められ、そのレビュープロセスも厳格だった。それゆえ、過去のレビュー結果と内容が異なっていたとしても、われわれは今回の結果に自信を持っている」と述べている。
では、なぜクランベリー製品の摂取がUTIの予防につながるのだろうか。研究グループは、クランベリーに含まれている、ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンに、膀胱壁などへの細菌の付着を抑制する作用があるためだと説明している。ただ、Stephens氏によると、今回のレビューでは、最も効果的なクランベリーの摂取量や摂取方法を特定することはできなかったという。
一方、米ノースウェル・ヘルスの泌尿器科医であるJohanna Figueroa氏は、「UTIは十分な水分摂取により細菌を尿とともに排出することで予防できる。クランベリー製品の摂取は、それとはまた別の予防方法だ」と話す。同氏は、「クランベリーのサプリメントがUTIの予防になり、効果があると感じるならば、使用するといい。もし効果がなければ、医療従事者は別の治療法を考慮するべきだ」とし、「いずれにせよ、UTIの予防では水分摂取が重要であることに変わりはない」と強調している。
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・Cranberries for preventing urinary tract infections
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