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パーキンソン病は会話からAIで識別可能、診断応用の可能性も-名大ほか

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2023年05月15日 AM11:21

患者9割以上が言語障害を経験、自由会話テキスト解析と異常の報告はほとんどない

名古屋大学は5月12日、パーキンソン病について、自然言語処理の技術を用いて会話内容の解析を行い、患者の会話の特徴の把握と自由会話テキストからのパーキンソン病の診断の可能性を検討した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経内科学の勝野雅央教授、横井克典客員研究者(筆頭研究者、国立長寿医療研究センター脳神経内科)ら、愛知県立大学情報科学部の入部百合絵准教授、豊橋技術科学大学情報・知能工学系の北岡教英教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Parkinsonism & Related Disorders」電子版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患。比較的患者数が多い疾患であり、その有病率は年齢とともに増加する。主に、動作緩慢、筋強剛、安静時振戦などの運動徴候と、認知、精神、睡眠、自律神経、感覚障害などの非運動徴候によって特徴づけられる。これらの症状に加え、パーキンソン病ではコミュニケーション上の変化もよく見られ、発話、音声、心理などさまざまな要因が影響する。既報告によると、パーキンソン病患者の90%以上が何らかの言語障害を経験していると考えられている。一方、パーキンソン病患者における、自由会話のテキストの解析と異常の報告はこれまでほとんど行われてこなかった。

自然言語処理を用い、認知機能低下のない患者で発話変容を病態生理的に解析

そこで今回の研究では、自然言語処理を用いて発話テキストを解析し、認知機能低下のないパーキンソン病患者における発話変容の病態生理的メカニズムを明らかにすることを目的とした。2012年4月~2020年3月にかけて、パーキンソン病患者73人と健常対象者54人を募集。このうち、パーキンソン病患者17人と健常対象者1人がデータ不足のため除外され、さらに、最終的にレビー小体型認知症と診断された患者3人も除外された。結果として、パーキンソン病患者53人(男性24人、女性39人)、健常対象者53人(男性24人、女性39人)を解析対象とした。年齢、性別、教育年数、MoCA-Jの各値に関して、グループ間で有意な差は認めなかった。

研究では、パーキンソン病患者53人と健常対照者53人の会話を録音し、その内容を文章に書き起こした。次に、書き起こしたテキスト情報について自然言語処理を用いて分析し、さらに機械学習アルゴリズムを用いて各グループの会話の特徴を明らかにすることを試みた。この分析では、品詞と構文の複雑さに焦点を当てた37の特徴量を評価項目とし、サポートベクターマシン(SVM)を用い、10分割交差検証法でこれらの特徴量のうち、パーキンソン病患者の会話の識別に有効な項目を絞り込み、各群の識別率についても検証した。

有意差のある6つの特徴量を選択、患者は動詞・格助詞「多」名刺・フィラー「少」

パーキンソン病群と健常対象者群の間で言語流暢性課題(「か」で始まる単語を1分間で、できるだけたくさん言ってください)や意味流暢性課題(動物の名前を1分間で、できるだけたくさん言ってください)に有意差はなかったが、品詞の数はパーキンソン病群が健常者群より有意に少ないことがわかった。文の数に関しては、有意な群間差は見られなかった。

次に、Wrapper法を用いて、パーキンソン病群と健常対象者群を識別するための特徴量を選択する試行を4回実施した。10分割交差法の結果、3回目の試行で、陽性的中率と陰性的中率のバランスを示す値であるF値が最も良好だった。感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率は、3回目の試行ですべて0.83を上回っていた。

以上の解析において、パーキンソン病患者と健常者を見分けるのに重要な手がかりとして、動詞の割合、格助詞の分散、1文あたりの一般名詞、固有名詞、動詞、フィラーの6つの特徴量が選択された。選択された特徴量を分析した結果、パーキンソン病患者は健常対照者に比べ、動詞と格助詞(分散)の割合が高く、名詞とフィラーの割合が低かった。なお、6項目全てでパーキンソン病群と健常者群との間に有意差が認められた。

精度80%以上でパーキンソン病と健常者を判別、診断利用の可能性を示唆

本研究の結果より、認知障害のないパーキンソン病患者と健常者との間で、会話内容の差異があることが見出された。具体的には、パーキンソン病患者の会話は健常者に比べて、「自発的な会話で1文に話す品詞の数が少なく1つの文章が短い」「動詞と格助詞(分散)が多く、名詞とフィラーが少ない」などが明らかになった。この会話の変化を応用することで、サポートベクタマシンは80%以上の精度でパーキンソン病と健常者を判別できることが判明。これらの結果は、自然言語処理による言語解析の可能性を示唆し、パーキンソン病の診断に利用できる可能性を示唆している。今後、認知機能の低下を来したパーキンソン病患者の会話の解析や、パーキンソン病以外のアルツハイマー病を中心とする神経変性疾患の患者の会話の解析を自然言語処理により行っていく予定だ、と研究グループは述べている。

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