■人の評価が最大6割減
エクサウィザーズと京都大学が薬局ヒヤリ・ハット事例に基づき、PMDAが過去に行った評価結果を学習させた評価AIを開発したと8日に発表した。PMDAは、日本医療機能評価機構による「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」で収集、公表されている事例をもとに、医薬品の名称・包装等の観点から製品の改良や追加の注意喚起など製造販売業者による安全管理対策の要否を検討し、評価結果を踏まえ必要な対策を講じている。
例えば、販売名類似による取り違えの報告が多く見られた場合、販売名の変更や処方オーダーシステム利用時に、名称の前に薬効を表示するなどの防止策を製造販売業者に求めている。
一方、薬局ヒヤリ・ハット事例は年10万~18万件程度報告されており、そのうちPMDAの調査対象となる事例が年6000~7000件程度発生し、PMDAでの人による評価分類に対する負担が増加していた。調査対象は増加傾向にあり、報告データにはテキストデータが含まれ、報告項目の単純な場合分けでは評価の自動化が難しく、AIの活用による効率化が期待されていた。
そこで、2020年度から22年度まで厚生労働科学研究で京大大学院医学研究科の岡本里香氏が研究代表者となり、薬局ヒヤリ・ハット事例に対する安全管理対策評価に関するAI開発を進めてきた。
京大とエクサウィザーズが10~20年度までの薬局ヒヤリ・ハット事例で調査対象とした約9万件の事例とPMDAの評価結果を学習させ、評価AIを構築した。昨年度は21~22年度に調査対象とした事例をもとに、AIによる評価の効果検証を行ったところ、人による評価が必要と判断される事例を全て抽出できることを確認した。
その後、「AIによる評価」と「検証結果によって導き出されたルールによる評価」を組み合わせた評価モデルを開発することで、製品改良や注意喚起など対応が必要となる事例の見落としをゼロにしつつ、既存の抽出条件を適用したのみの場合と比べて、PMDAの調査対象事例を年1000~2500件と約3~6割の削減を実現した。
PMDAは、評価AIの開発を踏まえ、今年度から薬局ヒヤリ・ハット事例の評価にAIを試行的に導入していく方針だ。
初回はAIと並行して人手によっても確認を行い、問題がなければその後当面の間、AIによるスクリーニングで除外された事例の一定割合を人手で確認する予定である。評価を行う上で事例の見落としがないか見極めながら慎重にAIを導入し、段階的に拡大していくとしている。