くすり未来塾は、薬価20円未満の製品を「超低薬価品」と名付け、「コスト増に対応余力なし、卸の在庫コスト・配送コストがマージンで確保できない」製品と指摘。毎年改定で「超低薬価品が急増中。金額ベース10%、アイテム数50%時代の到来」と対応策の検討の必要性を示した。
提言では「医薬品卸は、配送料を医療機関・薬局からは徴収していないが、低薬価品は配送コストを考えれば赤字品目で、この拡大は流通産業の安定性に大きな懸念。最低薬価による下支えの仕組みのみでは、さらに多くの品目がこのカテゴリーになる可能性が高い」と安定供給に強い懸念を示した。
支援策として、▽最低薬価制度の実コスト反映ベースでの見直し(引き上げ)▽流通コストが反映できる薬価制度(購入価償還等)の検討▽流通マージン確保策の検討(最低でも緊急配送は配送有料化、一定の低薬価品の配送を有料化など)――を挙げ、「広い視野に立って検討を行うべき」と提言した。
そのほか、新薬の新たな薬価算定ルールとして第4弾で提言した企業届出価格を中央社会保険医療協議会了承のもとで薬価とし、一定期間維持する「企業届出価格承認制度」について、「イノベーション価格算定方式」と名付け、新薬の多様な価値を反映する仕組みにするよう提言した。
多様な価値の反映と企業の説明責任について、早期アルツハイマー病治療薬レカネマブの米国迅速承認に当たり、エーザイが同剤により軽減される医療費や家族らの介護活動などを独自モデルを用いて価格算定したケースを例示。薬価に反映する新薬の価値は「企業側がまず説明責任を果たすことが基本」とした。
薬価算定に必要な価値として▽患者にとっての価値▽家族・社会にとっての価値▽医療者にとっての価値▽社会保障費の軽減に対する価値――を挙げた。日本の制度にはQALYによる費用対効果評価以外はルールがないとして「医療の価値、医薬品の価値そのものにふさわしい評価が必要」と提言した。
提言した算定方式は、この評価を加味して初期の薬価を高くする。薬価を維持したまま一定期間後に薬価の再評価を行い、高くした分を引き下げることを基本とする。再評価後の価格も企業自身が届け出を行い、リアルワールドデータなど市販後臨床データで臨床的な価値が認められれば、一定の価格引き上げを行う。再評価後の薬価も特許切れまで維持する。
くすり未来塾は、現行制度が類似薬や他の製品の価格動向といった企業側が予見できない事情とルールによって薬価が引き下げられ、事業の不安定性と低いイノベーション評価を招いていることを指摘し、提言したルールによって薬価に対する企業の主体性を確保して予見性の確保を図りたい考え。
これにより、新薬開発の主流となっているスタートアップも国内開発がしやすくなり、必要な薬を届けられるようにする。合わせて薬剤費の財政中立も図る。
今回の提言は、これまでの検討をまとめた形だが、武田俊彦共同代表は「検討は一区切りというつもりはなく、今後も必要に応じ提言していく」と話している。