IgE抗体を介さない食物アレルギー、世界的に増加
国立成育医療研究センターは5月10日、「消化管アレルギー嘔吐タイプ(正式病名:食物蛋白誘発胃腸炎(Food protein-induced enterocolitis syndrome, FPIES))」に対するアクションプランを日本で初めて作成し、同センターのウェブサイトに掲載した。この研究は、同センターアレルギーセンター、救急診療部、免疫アレルギー・感染研究部などが、厚生労働省難治性疾患政策好酸球性消化管疾患研究班と共同で行ったもの。研究成果は、「World Allergy Organization Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
食物蛋白誘発胃腸炎は、IgE抗体を介さない食物アレルギーで、多くは新生児・乳児期に発症し、原因食物を食べた場合、約1〜4時間後に頻回の嘔吐、24時間以内に下痢を呈する。即時型の食物アレルギーとは異なり、蕁麻疹などの皮膚症状や、呼吸器症状はない。重症例では脱水や循環血液量減少性ショックに至ることもあり、生命に危険が及ぶ場合もある。通常のアレルギー検査(特異的IgE検査や皮膚テスト)では原因食物の特定は行えず、食物蛋白誘発胃腸炎の確定診断は食物負荷試験、もしくは2回以上の同一原因食物摂取による発作のエピソードによってなされている。
この疾患は日本のみならず世界的に増加しているが、日本での社会的認知度は高くなく、保護者、子どもに接する人、医療従事者などの理解は進んでいない。さらに、IgE抗体を介した即時型食物アレルギーのアクションプランは国内でも広く使用されているが、食物蛋白誘発胃腸炎のアクションプランは作成されておらず、開発が求められていた。
患者保護者用と医療従事者用で構成、適切な治療につながることに期待
研究グループは今回まず、食物蛋白誘発胃腸炎の国際コンセンサスガイドラインを基に暫定版のアクションプランを作成した。アクションプランは、患者保護者用と医療従事者用で構成される。暫定版アクションプランの内容や表現、レイアウトなどに対して、患者保護者54人と救急医・小児科医などを含む医師30人へアンケートを通じた意見聴取を行い、暫定版アクションプランを改訂した。さらに、この改訂版アクションプランに対して、患者保護者19人と医師28人にデルファイ法を用いた意見聴取・同意形成を行い、最終版のアクションプランとした。
最終的に、患者保護者用には、子どもが誤ってアレルギーの原因食物を食べてしまった場合に、どんな症状に注目したら良いか、救急車を呼ぶタイミングなどをフロー形式でまとめた。医療従事者用には、食物蛋白誘発胃腸炎に関する情報提供と急性期症状への対処法などをまとめた。
「アクションプランは、子どもに消化管アレルギー症状が出現した際に、保護者が冷静に対応するための一助となり、医療従事者が適切な治療を行える支援につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立成育医療研究センター プレスリリース