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小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群、新たな疾患感受性遺伝子を同定-神戸大ほか

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2023年05月11日 AM11:01

2割は成人期も再発を繰り返す難治例、病因解明が望まれている

神戸大学は5月9日、小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の7つの疾患感受性遺伝子を新たに同定し、それらの遺伝子の多くは、免疫に関連するだけでなく腎臓にも関連する遺伝子であることを明らかにしたと発表した。この研究は、兵庫県立こども病院の飯島一誠院長(兼 同大大学院医学研究科内科系講座小児先端医療学分野客員教授)、同大大学院医学研究科内科系講座小児科学分野の野津寛大教授、長野智那医学研究員(兼 ボストン小児病院腎臓内科ポスドク)、堀之内智子助教、国立国際医療研究センターゲノム医科学プロジェクト(戸山)の徳永勝士プロジェクト長、Xiaoyuan Jia特任研究員、河合洋介副プロジェクト長、ボストン小児病院腎臓内科のMatthew G. Sampson准教授、ソルボンヌ大学腎臓内科のPierre Ronco教授、コロンビア大学腎臓内科のSimone Sanna-Cherchi准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

小児ネフローゼ症候群は小児の慢性腎疾患で最も頻度が高く、日本では、小児10万人あたり年間6.49人(全国で約1,000人)の小児が、この病気を発症する。尿中に大量のタンパク質が漏れ出て血液中のタンパク質が極端に少なくなる原因不明の難病で、小児慢性特定疾病および指定難病に指定されている。小児ネフローゼ症候群の80~90%はステロイドに反応し寛解となるステロイド感受性ネフローゼ症候群であるが、その20%程度は成人期になっても再発を繰り返す難治例であり、病因・病態の解明と、その知見に基づく原因療法の開発が強く望まれている。

ステロイド感受性ネフローゼ症候群の大半は多因子疾患であり、何らかの遺伝的な素因(疾患感受性遺伝子)を持つ人に、感染症などの免疫学的な刺激が加わって発症すると考えられている。これまでに、HLAクラスII、免疫関連遺伝子であるCALHM6とTNFSF15、タンパク尿を防ぐ腎糸球体スリット膜の構成タンパク質であるネフリンの遺伝子NPHS1が疾患感受性遺伝子であることが明らかにされているが、それらは比較的サンプルサイズの小さい民族特異的GWASによって得られた結果であり、またGWAS後の解析も限定的なものだった。

患者2,240例を含む多民族GWASメタ解析で、7疾患感受性遺伝子を新たに同定

そこで、比較的大規模な多民族による小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群GWASのメタ解析などを行うことで、より多くの疾患感受性遺伝子を同定し、さらにそれらと免疫系および腎臓への関わりを網羅的に検討した。

研究グループは、日本人987例を含む世界の6つの民族からなる計2,240例の小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群とそれぞれの民族の健常コントロール計3万6,023例を対象として、多民族GWASメタ解析や民族特異的GWASメタ解析などを実施し、HLAクラスIIなどの4つの既知の疾患感受性遺伝子に加え、新たに7つの疾患感受性遺伝子を同定した。

同定された疾患感受性遺伝子領域のバリアント、免疫細胞だけでなく腎細胞にも関連

次に、これらの疾患感受性遺伝子領域(HLA-DQA1、AH1、CALHM6、TNFSF15)や疾患感受性遺伝子の可能性があると考えられる遺伝子領域(GSDMB、ORMDL3など)のバリアントが免疫細胞や腎組織のeQTLとして作用するか否かを検討したところ、特定の免疫細胞のeQTLとしては作用するが、尿細管間質や糸球体といった腎組織のeQTLではないことがわかった。つまり、これらのバリアントは免疫細胞のeQTLとして当該遺伝子の発現には影響を与えるが、腎組織ではeQTLとして当該遺伝子の発現には影響しないことが明らかになった。

一方、多民族GWASメタ解析におけるゲノムワイド有意なバリアントと免疫細胞および腎細胞から得られたATAC-seq由来のオープンクロマチンデータの解析では、多くの遺伝子領域のバリアントで、免疫細胞と腎細胞の両方のオープンクロマチン領域と重複することが認められた。すなわち、これらの遺伝子は、免疫に関連するだけでなく腎臓にも関連する遺伝子であることが明らかになった。

「本研究成果によって、小児ネフローゼ症候群の遺伝学的背景の理解がさらに進展し、発症機序や病態生理の解明および新たな治療法の開発に貢献することが期待できる」と、研究グループは述べている。

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