標準的治療でメトトレキサートをどの程度減量できるのかは不明だった
慶應義塾大学は4月27日、関節リウマチ患者に対してTNF阻害薬「アダリムマブ」を開始する際、併用する「メトトレキサート」を半減可能であることを、国際共同臨床試験である「MIRACLE試験」で示したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室(リウマチ・膠原病)の金子祐子教授、玉井博也特任助教らの研究グループとエーザイ株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Lancet Rheumatology」に掲載されている。
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関節リウマチは、メトトレキサートなど従来の抗リウマチ薬に加え、炎症を起こす特定の分子を標的にした生物学的製剤やJAK阻害薬が使用可能となり、多くの患者で病勢コントロール、関節変形進行の抑制が可能となった。
関節リウマチと診断された場合、まずはメトトレキサートで治療を行い、6か月時点で治療目標を達成しない場合には生物学的製剤やJAK阻害薬を使用することが、世界中で標準的な治療として推奨されている。生物学的製剤を追加する場合、メトトレキサートを継続することで治療効果が高まることが知られており、それまで使用していたメトトレキサートの同量継続が一般的に行われてきた。
一方、メトトレキサートの用量が多いほど、消化器症状・脱毛・肝障害・血球減少などの副作用が増えることが知られており、生物学的製剤追加時に使用するメトトレキサートを減量することができないか検討されてきたものの、標準的な治療を行った際にメトトレキサートがどの程度減量できるのかは不明だった。
国内12施設、韓国6施設、台湾6施設で早期関節リウマチ患者300人が参加
MIRACLE試験は金子教授、玉井特任助教らが中心となり、国内12施設、韓国6施設、台湾6施設で行ったエーザイとの共同研究で、300人の早期関節リウマチ患者が参加した。
アダリムマブの皮下注射後にメトトレキサート同量継続群と減量群で比較
同試験ではまず、メトトレキサート内服による治療を24週間行い、治療目標(寛解状態)を達成しない場合にはTNF阻害薬の1つであるアダリムマブの皮下注射治療を追加した。この際、同時に使用するメトトレキサートを同量継続する群と6~8mg/週に減量する群の2群に1:1で割付け、さらに24週後に治療目標を達成する割合を比較した。
メトトレキサートを減量しても効果は劣らず、有害事象も少ないと判明
治療目標を達成した割合はメトトレキサート同量継続群で38%、減量群で44%と減量群で効果は劣らず、関節破壊の程度や機能障害に関しても差を認めなかったという。一方、アダリムマブを追加した後の有害事象に関しては、メトトレキサート同量継続群で35%、減量群で20%と、減量群で少ない傾向にあった。メトトレキサートの用量は同量継続群が13.2mg/週、減量群が7.6mg/週だったとしている。
同臨床試験により、早期関節リウマチ患者に対してガイドラインに従い、まずメトトレキサートで治療を開始し、効果不十分であった場合にTNF阻害薬であるアダリムマブを追加する際には、併用するメトトレキサートを半減しても、有効性は劣らず、有害事象は少ない傾向であることが、世界で初めて示された。
今後、長期観察時の有効/安全性評価を行う予定
今回の研究成果により、アダリムマブをメトトレキサートに追加した際の有害事象を減らすこと、薬剤費の削減、また、関節リウマチの寛解が一定期間維持された後の薬剤減量が早まることが期待される。
「今後、長期観察時の有効性と安全性の評価を行うとともに、減量が推奨される集団を明らかにすることで、より安全性の高い治療方法を提供できると考えている」と、研究グループは述べている。
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